M&A月報 No.209「海外投資減少と財源確保」

プミポン国王がシリラート病院にご入院されたというニュースが報じられ

た。その後、胆のうの摘出手術を受けられたが、手術は成功し、術後の経

過は良好とのことで、国民一同、安堵している。

多くの国民が病院を訪れ、御快復を祈り、お見舞いの記帳を行っているが、

プラユット首相やインラック前首相も病院を訪れている。

国民の前にまたお元気な姿をお見せになられることを念じている。

軍事政権下における海外よりの投資は回復基調にあるが、タイ投資促進委員

会(BOI)は、本年1~9月の外国資本が10%以上ある企業による投資

促進権の申請件数が642件となり、それに伴うタイへの海外直接投資(F

DI)は計3106億3000万バーツだったと発表した。前年同期に比べ

件数は24.7%の落ち込みだが、金額面では第2弾のエコカーや天然ガス

発電所等の投資申請を受け付けたため11.4%減にとどまっている。エコ

カーにはメーカー10社が申請し、総額は1388億8900万バーツに達

した。

 国別にみると、やはり日本からの投資が最も多く、それでも件数は前年同期

比37%減の282件、投資額は同48.6%減の1086億8300万バ

ーツの結果となった。

タイ中央銀行(BOT)は、直近の主要経済指標について、タイ経済は内需や

観光分野で回復しつつあるものの、足取りが重い状態が続いていると発表し

た。今年の国内総生産(GDP)の目標成長率1.5%の達成は困難になる

との見通しも示している。

BOTは、景気は回復の途にあるが、公共投資や民間設備投資が思ったほど伸

びず、全体の回復ピッチはやや鈍いと指摘し、それは財政支出の出動が遅れ

ているためとしている。来年の成長率見通しについても、予算の確実な執行

を前提として、当初の5.5%から4.8%に下方修正した。軍事政権下に

おける予算執行手続きの厳格化の行き過ぎも牽制している。

また、目下直面する課題は、為替の変動幅拡大、個人消費の低迷、輸出の鈍化

の三つとされ、特に、これまでけん引役だった輸出主導の景気回復は期待でき

ないとの考えを示している。過熱気味であったバブル調の景気が冷却され低成

長となり、国家として当面、経済面でも厳しい舵取りが続くことが予想される。

一方、失業率は相変わらず低く、9月は0.8%であった。前年同月と前月は

いずれも0.7%である。失業者数は31万1000人で、前年同月比4万人、

前月比2万4000人それぞれ増加している。失業者を年齢別にみると、新卒者

が含まれる15~24歳の失業率が4.1%と一番高くなっている。

就業者数は前年同月から23万人増加。業種別にみると、農業就業者は1350

万人で、前年同月比8万人増となっている。非農業は2495万人で、前年同月

比15万人増となった。

それでも産業界では約31万人の労働者不足の状況である。特に、食品や衣料品

など労働集約型産業の業種においては深刻である。主要農産品の収穫期に当たる

年初には、地方から出稼ぎに来ていた労働者が帰郷、前述のように農業従事者が

増加するため、より一層、産業界における労働者不足数が加速するであろう。

また、近隣各国にタイを含む外資系企業の進出が相次ぎ、それぞれの国内の労働

需要が高まっている中、タイに出稼ぎに来ているミャンマーやカンボジア、ラオ

スなどの外国人労働者が今後、本国に帰国する可能性が高いため、タイの労働者

不足を一段と深刻化させる懸念がある。

来年、アセアン経済共同体が発足する中、タイにおける労働者不足は大きな課題

であり、政府としても、労働集約型産業の周辺国への移管誘導、高付加価値・高

技術産業のさらなる取り込みの政策を本格化させていくであろう。

汚職撲滅対策の一環として、交通違反のもみ消しのため交通警官を買収しようと

した違反者を捕まえた警官に1万バーツの報奨金を与えるキャンペーンが開始さ

れた。タイでは警官の賄賂要求は珍しくないが、「警察は賄賂を要求する警官を

捕まえる代わりに、贈賄側を逮捕しようとしている」などと批判が噴出している。

今まで、なにかとグレーゾーンが広かったタイであるが、軍政下の様々な分野に

おいて、そのグレーゾーンが狭まっており、このキャンペーンもその一つであろ

うか。過去、「賄賂は給料が低い警察官の重要な収入源である」と述べた警察幹

部の言葉が思い出される。

賄賂は悪しき警察文化の一つであったが、警察は今回のキャンペーンをさらに全

国区に拡大し、交通違反以外の行為も対象とする方針のようである。

 目下、何かと話題の相続税導入であるが、財産を移転させる動きが活発になって

いるようである。バンコクの土地事務所において、土地などの不動産を持つ親が

子らに譲り渡すことが増えており、係る手続きの件数が9月は従来の約2倍とな

っている。鑑定価格1~10億バーツの土地の譲渡もあり、相続税導入が具現化

していく中で、益々その動きは加速していくであろう。相続税法案については法

制委員会が精査中で、11月中旬までに閣議提案を行い、2015年中に発効さ

れる計画である。

戒厳令で外国人旅行者が前年割れしている中、タイ国内の観光を促進しようと、

政府は国内旅行費用の税控除を承認した。個人のホテル代やツアー料金などは、

個人所得税から上限1万5000バーツの税控除が可能になる。法人の場合は、

職員研修会やセミナー開催などで会場費などの2倍の控除が認められる。201

5年12月末まで実施する。

財務省は今回の税制優遇について、個人所得税と法人税が計約10億バーツ減少

するが、旅行関連業者には総額約30億バーツの増収になると試算している。

国家平和秩序評議会(NCPO)の議長でもあるプラユット首相は、「あまり長く権

力の座には留まりたくない。毎日辞めたいと思っているが、愛する祖国を発展させ

るため、そして国民に幸せを取り戻すため、他国に頼る事なく我々自身で将来の基

礎を築いていくのだ」と発言した。

日本と比べてみても、タイ人のほうがはるかに国の将来を考えているように感じら

れるし、自分達の手でこの国を変えていくのだ、良くしていくのだという気概を持

っているようにも思う。

金権政治は幕を下ろし、1932年の立憲後19回目の改正となる暫定憲法下の暫定政権

(軍政)において、来年末以降の総選挙及び民政化に向けた様々な取り組みが始まっ

ている。当然のことながら、次回総選挙の結果が大変重要な意味を持ってくることは

言うまでもない。 

国家として苦しく厳しい局面を迎えているが、国民分断危機を乗り越えるために軍政

主導で国民が一体となって努力し、悲願である国民和解を成し遂げ、民政による新生

タイ王国へと生まれ変わっていくことを願って止まない。

タイ再生は必ずや実現する。

タイは大丈夫である。

以上

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