M&A月報 No.208「プラユット内閣始動」

プラユット首相が、閣僚人事を国王に奏上、それが承認された為、発表が

為された。想像していた様に、全閣僚33人中、軍関連が12人占め、軍事

内閣の様相と成った。

観光・スポーツ相として女性一人も登用された。

財務相にはさすがに元副財務相を起用した。

民間人では、財政/金融に見識のあるプリディヤトーン氏が副首相として

起用され、恐らくこの分野を不得手とする首相は種々助言を求める事に

なるのであろうと推測される。

これから約一年間、お手並み拝見となる。

人気取り不要/バラマキ不要の政権でこそ出来る所を見せて欲しいと念願

している。

しかしこの機を逃してはならじと、張り切り出した財務相提案の相続税等

の導入には、日本を良く勉強し、その弊害も十分吟味し、慎重を期して討

議する様、影響力のある御仁に伝言を託した。

その全閣僚が、ご入院中の国王の病院に赴き、拝謁の栄を賜り、お言葉を

頂く様子が報道された。

国王が大変お元気そうなご様子である事を、非常に嬉しく感じている。

英国発の世界で最も権威ある新聞の一つとして評価されているFINANCIAL

TIMESの社説でアベノミックスが、三本の矢と言われているが、実際には

一本しか無いことが判明した。その一本は、金融緩和のみであると酷評され

た。

全く同感である。

案じていた円安が進みだした。あれほど円安を渇望していた経済界よりも、

これでは原油価格が上がり、電気代が上がる、大変だとコメントし出した。

何をか言わんやである。

ドイツが緊縮政策を推し進め、遂に無借金で過ごせる国に成ったと成果を発

表した。

如何に好景気が後ろ押ししているとはいえ、何と立派な事かと羨ましく感じ

入ると共に、選挙を勝ち取った政権でも、無借金国に出来る事を示したドイ

ツに拍手を送りたい。

しかし韓国/中国に諂わぬ安倍首相の外交姿勢には同調している。

今般、スリランカを訪問した。

日本首相としては24年振りで、何とその時訪問していたのは父君であった。

スリランカの将来性に着目し、目下積極的に関係強化に乗り出しているもの

よりすると、今回の首相訪問は大変有難い事と評価している。

プラユット首相が平服で現れ、初の閣議に出席した。

即ち、彼は任期通り、今月末で軍隊よりは退役し、平民と成り、首相の任務

を遂行する覚悟と解釈した。

そのプラユット首相が初の所信表明演説をした。

“汚職なき公正社会”“王政護持”が基本と成っている。

具体策としては以下である:

1.  南部の対立解消。

2.  貧富の格差是正。

3.  BKK都内の交通網整備。

4.  農家支援。

5.  通関手続きの合理化。

6.  観光客の誘致。

7.  洪水対策。

8.  ガス・燃料の価格体系の改革。

9.  ガス田の開発。

10.   環境に優しい環境エネルギーの開発。

11.   税制改革。

12.   鉄道網の整備。

13.   空港拡張、港湾の整備。

14.   国営企業の改革。

15.   食品加工業の強化。

16.   中小企業の競争力強化。

17.   重複する行政の合理化。

18.   政治家の介入を防ぐ公務員任命制度の導入。

その貧富の格差是正、税制改革の一旦として、鳴り物入りの相続税に付き、

早速プラユット首相は、「社会の公平、公正を創造するために相続税が重要

な役割を果たせるという点で内閣は合意に達した」と述べ、導入に踏み切る

考えを表明した。

立法議会に提出する相続税導入案の骨格について、「当初案では5000万

バーツ超の資産に対し一律10%の税率で徴収する」と説明したが、「導入

時期などの詳細はさらに検討が必要」と含みも持たせ、今後の議論を見守り

ながら修正の余地を残す考えを示唆している。

タイ富裕層や実業家らよりは、相続税について、基本的に歓迎、支持する意

見や見解が出ている。

「貧富の格差是正とする目的の達成に向け、相続税だけでなく、不動産税も

導入しなければならない」

「タイはかつて導入するはずだったのだ。資産を多く保有する人は税金をた

くさん払うべきだ」

との声も出ているが、その上で「ルールを明記し、適切な税率を設定してほ

しい」との注文も出ている。

上述したが、じっくり吟味し慎重を期して討議してもらいたいと思う。

軍事政権下における海外よりの投資は回復基調にあるが、

タイ投資促進委員会(BOI)は、本年1~8月の外国資本が10%以上あ

る企業による投資促進権の申請件数が550件となり、それに伴うタイへの

海外直接投資(FDI)は計2883億4000万バーツだったと発表した。

前年同期に比べ件数は29.4%落ち込んだが、金額面では、3第2弾のエコ

カーへの投資申請を受け付けたため、8.8%減にとどまっている。エコカー

にはメーカー10社が申請し、総額は1388億8900万バーツに上った。

国別にみると、やはり日本からの投資が最も多く、それでも件数は前年同期比

39.7%減の250件、投資額は同51.1%減の1000億6300万バ

ーツの結果となった。今年上半期の大規模デモ及びクーデターが大きく影響し

ていると言えよう。

タイ地元紙は、クーデター後の軍政によるタイ外交について、国際舞台から仲

間外れにされるだけでなく、西側諸国の信頼獲得に向けた努力をも傷つけてい

る、と辛口批判を展開した。

「今後タイが何をしようとしているのかを国際社会に提示し理解を得、信頼感

を醸成しなければならない大事な時期に、国際社会の中で上手くやっていくた

めの知恵や気配り、配慮に欠けている。今回のクーデターや軍政に対するタイ

批判は広範囲且つ深いものになってはいるが、批判している国々も軍政との距

離を縮めるタイミングを見計らっている。それが上手く行くかどうかはプラユ

ット首相や外相が命令口調で自己正当を主張するのをやめ、国民の言葉で外交

について語る成熟ぶりと、そして意識の高さを示せるかにかかっている」と軍

政に強い注文を投げかけている。

これまで国際社会において、比較的したたかに上手く立ち回って来たタイであ

るが、クーデターや軍政に対する国際社会からの根深い批判を如何に払拭し、

民政移管後も見据えた円滑な外交を展開していくか、軍政、プラユット首相、

外相の手腕が問われている大事な時期でもある。

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