M&A月報No.114 「暫定政権とタクシン前首相動静」
1992年5月のクーデターの折は、国王は、民間人よりアナン首相、
パオ副首相(当社筆頭株主/会長)を任命し、二人に組閣を命じ、
9月には総選挙を行い、チュワン政権が発足したが、事情は理解するが、
今回は総選挙が一年後の見込みとなっている事は、余りにも暫定政権が
長期に及ぶ事が懸念されている。
タクシン前首相がスピードを念頭に上げ、強力に人々を引っ張って来た
だけに、何事にもスローとならざるを得ない暫定政府には苛立ちを
感じざるを得ない。
それを裏付ける様に経済の停滞の兆候が出て来た。
また人気取りの為か、30バーツの医療費の無料化を発表したり、
来年1月よりの最低賃金も3から8バーツ引き上げる事を決定した。
バンコクでは184から191バーツとなる。
BOI等の認可作業も遅れが生じており、これからの一年間は忍耐を
求められそうな様相となって来た。
また、電話公社(TOT)、通信公社(CAT)、タイ航空(TG)、タイ空港
会社(AOT)等に、軍の幹部が役員で入り込む人事が発表されたが、
これでは軍部が自己の利益の為にクーデターを起したと言われ
かねないとの批判が噴出している。
驚く事に、タクシン氏が、北京訪問中のスラユット首相を尋ねたらしい。
帰国を認め、逮捕等せぬ言質を取ろうとしたのであろうか。
体よく門前払いを喰らったとの報道である。
今、タクシン氏が帰国し、何も訴訟が起こらねば、又デモ騒動が
持ち上がり、首相に対する風当たりは相当なものになると予測できる。
タクシン氏がこの辺りの事をどの様に読んでいるのか疑問を感じる
行動であった。
ポチャマン夫人が自分達や子供達の為に広大な土地を購入し、自宅の
建設に着手していたが、この土地の購入に際し、当時のタクシン首相が
圧力を掛けたとの疑惑があったが、今回、市場価格より大幅に安い価格で
不当に入手したとの問題が表面化し、司法の場で争われる様相を呈してきた。
また国税庁も、SHIN CORPの株売却の折は、市場での取引なので税金は
掛からぬとの判断を示し、今回のクーデターの引き金になった訳だが、
前言を撤回し、息子と娘に対し、個人所得税の課税を通知した。
その額、100億バーツ。
この国税局の豹変には釈然としないものを感じる。
消費者団体よりも国税庁の長官は釈明すべきと の強いコメントも出された。
同感である。
一方、この程度のお金をタイの慣例に則り、タンブン(寄付)を行っておれば、
今回の騒動は無かったのでは無いかとも感じている。
ポチャマン夫人の今の思いは如何なものか出来れば聞いて見たい所である。
更にポチャマン夫人の義兄に対し、5億4600万バーツの追徴金を取ると
国税当局は発表した。
以前は兄弟間の贈与なので無税との判断を下していたが、今回の調査で、
タクシン家の家政婦が名義借りで保有していた、SHIN CORPの株を
譲渡したという、虚偽の取引であった為課税するとの説明である。
何れにせよ、タクシン家本丸への切込みが手ぬるいと、現政権に対する
支持率は降下して来ている。
外堀を攻略して、最後に本丸を攻めようとの作戦かも知れぬが、飽きっぽい
性格のタイ人の事、少しスピードを上げる必要性があるのではと感じる。
スラユット首相は問題のある南部を訪問し、イスラム系のリーダーと面談し、
1,000人の聴衆を前に、前政府の政策の不備に付き、我々側に対応の
問題があったと謝罪した。
今後は手を取り合って前進しようと呼び掛けると、涙する聴衆も居り、
今後に期待するとの多くのコメントがなされた。
平和が取り戻せる事を念じたい。
新空港の少し先にROYALというGOLF場がある。
たまたま筆者もメンバーで、11番にある質素な住宅の左右の土地の
草刈が行われているのを不審に思い、キャディーに聞くと、これが
暫定首相の自宅と言う。
食堂より出る時に、オーナーさんがドアーを開けてくれた。
驚いて、「今日は、有難う」と言って外に出ると、お供一人を連れ首相が
入って来た。これで納得。
やはり、首相の肩書きが付くとオーナーさんの対応にも変化があるものである。
“こんにちは”とご挨拶、質素な好々爺の感じで、悠々自適な生活を楽しんで
いたのに急に外に引っ張り出されたとの感であった。
タクシン氏とは違い、全く警護には気を使っていない様子で、タイ人達は
彼は狙われる様な人では無いとのコメントであった。
先月のクーデターの折り、抗議の意思を表明のため、自己のTAXIを
戦車にぶっつけた運転手が自殺をした。
どうも原因は、報道官が“誰も命を掛けるほど、今回のクーデターには
反対していない。”と述べた事にあるらしい。
“民主主義のために自らの命を捧げる。”との遺書もあり、共鳴と同情を
よんでいる。
日本大使館がルンピニ駅の近くの一等地に新ビルを建設し移転した。
領事館とも一体となり、便利さは好転するが、いったい幾らの血税が
使われたのか気に成る所である。
もっと実際に即した危険情報等を流して貰いたいものである。
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