M&A月報 No.227「ドタバタ新憲法最終草案劇」

憲法起草委員会が新憲法の最終草案を公表した。

「民主主義の原則に反する」等との批判を押し切り、軍事政権の要求を大筋で

受け入れる内容となっている。

クーデターで廃止された旧憲法下で、上院は民選議員と任命議員がほぼ半数ずつだったが、

最終草案では軍政の要求に応じ、経過規定として全議員を非民選とする任命制を採用。

議員250人(任期5年)のうち244人は軍政の国家平和秩序評議会(NCPO)が決め、

残る6人は国軍最高司令官、陸海空軍の各司令官、国家警察長官、国防次官が兼務する。

従来は下院議員でなければならなかった首相についても、第1次草案と同様、

一定の条件下で非議員の首相就任を可能としている。

起草委のミーチャイ委員長は、NCPOが上院の任命制を起草委に求めた理由について

「社会の平和と秩序が確保されておらず、具体的な改革も達成されていないため」と説明している。

「第1次草案よりも悪くなった。上院議員は自分たちを任命した『指導者』の

意見を聞かなければならないだろう」

「NCPOが起こしたクーデターの産物であり、国民の利益よりもNCPOの

要求を満たすものになっている」

「どの国でも採用されたことのない選挙制度を導入し、小政党の乱立を招くことで

政権の弱体化をもくろんでいる」

「国民の代表である下院議員の力をそぎ、NCPOが任命した上院議員に

政府の提出する法案を拒否したり、非議員首相を選出したりする巨大な権限を与えており、

この国をNCPOの完全支配下に置こうとしている」

「草案は、民主主義、人権、自由の観点からみて後退している」

「われわれにとって良い憲法とは、民主主義の原則に基づいて汚職を防止する憲法だ」

との数々の批判が噴出しているが、いずれにしても最終草案の賛否を問う

国民投票が8月7日に行われ、その結果如何では、今後のタイ国家のあり方への影響は大きい。

有権者は投票日に満18歳以上であり、最終案全体に賛成か反対か、新憲法発布後5年間、

国家改革続行のため国会両院合同会議で首相指名することに賛成か反対か、

の2項目の質問に答えることになる。

最終的に、国民投票で最終案が承認されれば、民政移管に向けた総選挙が来年7月に

実施される見通しであり、否決された場合、民政復帰はさらに遠のくことになるであろう。

軍政による、最終草案反対派の封じ込めのエスカレートも気になるところである。

クーデター以降、「態度矯正」と称し、軍政を批判するタクシン派の政治家や

ジャーナリストらの身柄を軍施設に数日間拘束することを繰り返しているが、

ここに来て反軍政派に軍施設で1週間の「再教育」を施すことも打ち出している。

最終草案をフェイスブックで批判したタクシン元首相派の元商業相は軍政に

身柄を拘束され、訴追された。軍事裁判所は保釈を認めたが、

裁判で有罪となった場合、最高2年の禁錮刑に処される。

また、タクシン氏の新年のメッセージが記された赤いプラスチック製ボウルを

手にした写真を同様にフェイスブックに投稿した女性が、扇動容疑で逮捕された。

扇動罪で有罪になると、最高7年の禁錮刑となる。

こうした軍政の姿勢に対し、「反対意見に対する不寛容ぶりは完全な不条理に達した」と

国際人権団体より非難の声が上がっているが、プラユット首相は、

「外国人はタイについて、人権のことしか気にかけていない。批判を続けることは受け入れられない」

と不満を漏らしている。

このような状況は、当分続きそうである。

例年通り、第37回目のタイ最大の自動車展示販売会「バンコク国際モーターショー」が、

バンコク郊外のドンムアン空港にほど近い「インパクトアリーナ」国際展示場で開催された。

出展企業は、自動車がトヨタ、ホンダ、マツダ、日産、三菱自動車、スズキ、いすゞ、

メルセデス・ベンツ、BMW、フォード、GMなど41社、二輪車がホンダ、ヤマハ、

カワサキ、ドゥカティなど12社。

3月23日~4月3日の開催期間中、入場者は目標の150万人を上回る

160万人に達したが(昨年は170万人)、購入予約台数は昨年同様、

目標の4万台を達成できない結果となった。予約台数は3万台超にとどまり、

金額ベースも300億~320億バーツとなり、目標の400億バーツを下回った。

しかしながら、今回のモーターショー開催が自動車産業の成長に貢献するとの期待もあり、

2016年の輸出台数は120万台、国内販売は80万台超で、計200万台以上と見込まれている。

今のタイの状況からすれば、まずまずの数字ではないだろうか。

今年の旧正月ソンクラン中に来タイした外国人旅行者の数は、前年比20.7%増の

44万人超となり、根強いタイの人気と、ソンクラン祭りへの期待を表す結果となった。

一方、ソンクラン中に海外旅行に行ったタイ人の数も前年比約20%の増加となった。

訪問先として最も高い人気を誇るのが日本である。タイ人にとっての日本人気は

高まるばかりで、昨今は、地方都市へも注目が増しており、

タイ当地で開催される日本関連フェアもどれもこれも盛況である。

今年のタイ旧正月ソンクラン祭り、別名「1年で最も危険な1週間」中に発生した

交通事故は、例年通りの再三たる注意喚起にも関わらず、前年比2.22%増の

3347件、負傷者数は同2.72%増の3656人、また死亡者数は442人となった。

全て前年比増の最悪の結果となってしまった。

警察当局はこの1週間を最も警戒しているが、特にスピード違反と飲酒による

オートバイ事故が後を絶たず、また、事故が最も多く発生する時間帯は

午後4~8時で全体の27%を占めており、当局による対策の手詰まり感も

否めない状況が毎年続いている。

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