M&A月報 No.204「インラック首相騒動記」
インラック首相が神妙な面持ちで、且つ、大変地味な服装で汚職追放委員会(NACC)に出頭した。
これは懸案となっている米の問題で、首相の職務怠慢があったか否かに付いての審査を行うもので、
期限が3月末であったもので、ここで告発されると、即首相の座を失う事になるものである。
首相は出頭と同時に、新たに証人等を揃える必要があるので、審査の期限の延長を申し出た。
去る30日、上院選挙が行われた。これは総議席150の内、今回は半数の77議席に付き行なわれた。
その結果、約40議席が政府支持派の候補の当選となった。
残り37議席中、反政府が20、立場不明が17と見られている。
一方、今回は改選されなかった73議席の内では、反政府が60、新政府13となっている。
即ち、反政府80、親政府53、どちらでもない17の構図となっている。この構図は非常に興味がある状況となった。
即ち、今回NACCが首相を弾劾しても、この上院で3/5以上の賛成が得られないと罷免が成立しないからである。
罷免するには90議席必要であり、これには、態度不明から10議席以上が賛成に回る必要がある。
もしインラック首相が失職した場合、政府は7人の副首相の中から首相代行や後任首相を起用する方向であるが、
反タクシンのステープ氏は、独自に後任首相を選んでプミポン国王に閣僚名簿を提出し承認を求める意向を表明
している。
貢献党が目障りとし最も恐れてきた「司法クーデター」が現実味を帯びてきた中で双方間の攻防も激しさを増し、
ついに国王に暫定内閣の承認を求めるという動きも出てきた。
即ち、首相が失職した場合は政権より憲法第7条を発動し、中立的な暫定首相を選出した上で、
国王に奏上する方法である。
憲法7条は「(統治原則への準拠)いずれかの場合に本憲法に適用すべき規定がない時においては、
国王を元首とする民主主義制度の統治慣習に従って判断する」と謳われている。
根拠法及び拡大解釈の議論が活発であるが、今回政権側がこの憲法7条に触れてきたことによる意図としては、
国王を政争に巻き込まず、また憲法裁が公平で良識な司法判断を下すことへの駆け引き的な脅しとも言えよう。
このような政治的ドタバタが続く中、インラック首相の兄タクシン元首相は、長期化する政治対立を打開する
ため、タクシン一族が政界から身を引く可能性について言及した。
タクシン氏は「タクシン一族は犠牲になるのをいとわない。政治家としての役割に終止符を打つ用意がある。
一方で、反政府デモも同時に中止すべきだ。総選挙が問題を平和的に解決する唯一の手段である」と述べた。
反政府陣営への妥協かどうかは不明であり、事の成り行き次第ではあるが、政界引退だけでなく、
タクシン一族の国外追放(逃亡)もあり得ない話ではない。
ステープ氏は「われわれは過去、何度も嘘をつかれ騙された。タクシンは嘘つきだ」と述べ、
タクシン氏との取引には応じない意向を強調している。
昨年の残念な結果から一転、今年のバンコク国際モーターショーは、予約台数は4万台に届かなかったものの、
購入予約の総額は計900億バーツと過去最高の成果であった。
エコカーなど低価格車の売れ行きは低調であったが、反面、ロールスロイスやジャガー、ポルシェ、
アストンマーチン、ベントレー、ランドローバー、ベンツ、BMW、ボルボなどの高級車の売上が好調であり、
富裕層の積極的購入意欲の衰え知らずを目の当りにし、羨ましい限りである。
タイ中銀は、金融政策決定委員会を開き、政策金利を年2%に据え置くことを決定した。
タイ経済は、政治混乱の影響で需要が減退し、観光業も打撃を受けた。
輸出は改善傾向を示したが、全体を押し上げるほどではなく、年間の経済成長率は見通しを
下回るのが必至と言及した。
今年のタイ旧正月ソンクラン祭り、別名「1年で最も危険な1週間」中に発生した交通事故は
計2,992件で、負傷者は3,225人、死亡者は322人であった。
主な原因は、例年同様、飲酒運転とスピードの出し過ぎであった。
警察当局はこの1週間を最も警戒しているが、特にオートバイによる事故が後を絶たず、
当局による対策の手詰まり感も否めない状況が長く続いている。
政府が発表した今年2月の失業率は、前年同月の0.6%から0.9%に上昇。
失業者数は33万1000人で、前年同月比8万7000人増加し、前月比では3万人の減少となった。
失業者の最終学歴は、大卒が最も多く10万4000人(失業率1.3%)で、中卒7万3000人(1.2%)、
小卒6万3000人(0.7%)、高卒5万7000人(1%)、無学歴3万4000人(0.4%)の順であった。
地域別では、東北部の失業率が最高の1.1%で、中部0.9%、北部と南部が0.8%、バンコク0.5%となっている。
引き続き、1%を切る失業率を誇るタイであり、優秀な人材の確保が困難な状況の中、
会計などの専門業務を海外へアウトソースする動きも出てきており、人材確保もさることながら、
会計等含む管理体系の抜本的見直し、改革も、特に人材不足に悩む中小企業には急務であると言えよう。
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