M&A月報 No.203「インラック首相、正念場」

3月2日、50日間にも及んだ、首都封鎖の一部が解除になった。

デモ隊の先頭に立ってきたステープ氏は、

“拠点の撤収は後退や敗北では無い。インラック首相が政治的役割を失った事を

内外に知らしめた事は大きな成果であった。

今後、人々はルンピニ公園に集結し、政府合同庁舎や内務省、首相官邸付近で

活動を続行するし、タクシン一族の企業に照準を合わせた活動も展開する“

と表明した。

また、ルンピニ公園に集結したのは、軍部よりの要請で、これは警備上の配慮より

決定したものともコメントがなされた。

これを実証する様に、この公園を取り囲む主要道路には、臨時の駐屯所が作られ、

警備の軍人が常駐し、救護班も待機している。

3日の朝、封鎖されていた主要交差点を見てみたが、不法駐車もテント村も屋台も

夜店も舞台も見事に無くなっており、ごみひとつ無く、見事な清掃振りで、

一夜にしてかくも変貌するものかと今回も驚かされると同時に、タイ人の素晴らしい

道徳、能力にも接した様な感がした。

一方、インラック首相の方であるが、2兆2000億バーツの大型公共投資の

資金借り入れ法案を実行しよとしたが、憲法裁は現政権が実行するのは

違憲との判断を示した。

これに対し、首相は、せっかくの景気浮上策であるのに残念とは述べたが、

判決には従うと語った。

新政権発足時に行なった官僚人事に対しても違法との判断が示され、

首相の憲法抵触との声も上がっている。米の融資制度に付いては、

その不払いが問題となり、農民のデモも発生している事は伝えたが、

これまた首相の職務怠慢が、既に汚職追放委員会で取り上げられ、

首相は近日中にその釈明を迫られている。

資金調達、不当人事、米問題で、首相は追い詰められて来ている感はするが、

野党が連日この様に攻めるのであれば、タイは平和な国にはならないとの

捨て台詞的な発言も出た。

しかし確実に首相包囲網は狭められて来ている事を実感する。

兄タクシン氏は、海外より、次期総選挙にはインラック氏は立候補しないと

コメントを発表した。

現在の彼女の弱腰に不満か、それとも操り人形である事を明確にしたかったのか、

首相の進退を兄が決める不思議を感じている。

そのインラック首相であるが、閣議に車椅子で出席した。

その姿に、メディアは一斉にフラッシュを焚き、大きく報道したが、これは過日、

チェンマイでVANより降りる時に躓き捻挫したものと表明した。

全治には1~2ヶ月を要するとの事であるが、何事にもケチが付いている感がする。

当地では、限られたニュースメディアしか見ることは出来ないが、最近の日本の

報道基準に非常な違和感を感じた。

海外で数名の日本人ダイバーが行くへ不明になったとトップ報道、

日本のサンフランシスコに向かった飛行機がエンジン不良でハワイに緊急着陸、

これも大きく報道、しかし、マレーシアから中国に向かった飛行機がテロかも知れぬ

状態で行方不明になり、多くの人々の命が失われたかも知れないのに、

日本人乗客が無しとなるとトップでは無く、小さくしか報道されなかった。

他の国々はテロの懸念もあるこの事態を重要と受け止め、大きく一面報道を展開するのに、

日本は日本人が巻き込まれていないと、興味が無いのであろうか。

テロと推測している理由は、二名の乗客が示し搭乗したPASSPORTが、

過去に於いてタイで盗難に遭い、盗難届けが出ていた事が発覚したからである。

しかし、その後、事の重要性に気付いたのか、次第に報道される様になり、

不明機の捜索にも乗り出したが、日本人以外の出来事には余り興味を示さぬ

メディアには問題を感じる。

アベノミクスで沸き立っている様に感じる日本であるが、経常収支も貿易収支も赤字、

愈々消費税も上がる。多くの大企業は政府に圧力を掛けられたのか給与アップ、

こんな現状に大きく首を傾げている。

日本は貿易立国、所得倍増で日本製のコストが上がり、苦しみ、止む無く

海外展開した時代を思い出している。

こんな施策で日本の貿易収支は黒字になるのであろうか。

円安、輸入品の値上がり、インフレ上昇、これをデフレからの脱却と賞賛するのであろうか。

内需頼りのみでは無理、日本よりの輸出が重要と思っている。

これで国債に不安が出たらどうするのか。

この点を、TV、新聞等マスコミは殆ど報道せぬ事にも苛立ちを感じている。

兎にも角にも歳出を抑制する以外無いと思うのだが、この施策では絶対に当選せぬ構造が、

最大の問題かもと思っている。

この点では、タイの知識層の人々、デモ隊の人々の方が、遥かに国の将来を

考えていると感じている。

今回のバラマキ、米の高価買取による国の借金の増大に付き、どれだけ多くの

懸念報道がなされているか、また国民が如何に憂慮しているか、

日本の皆様にもお見せしたいものである。

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