M&A月報No.103 「国王スピーチ2005」

今年も早いものであっと言う間に年末となってしまった。
12月5日は国王の78歳の誕生日。
恒例のスピーチが約1時間行われた。
国王はタク シン首相に対し、「ともかく、種々の批判が日々言われているが、
決して過剰反応せぬように、また日々反論せぬように」と戒められた。

『首相は広い見識により物事を見極めて欲しい。
首相の言動は法に照らして言及されるべきで、彼の個人的問題には
本日は入りたくない。

古の言い伝えに、“国王には間違いが無い”とするものがあるが、これは
国王を人として尊敬しておらず、むしろ侮辱しているものである。
自分は国王として間違った事をせぬように心がけている事を強調したい。

もし間違った事をせぬようにしていないと自分でも政府高官でもそれは死に至る。
何故なら万人が見ているからである。
その他官僚も然りである。もし注意深くしなければ、国も危険な状態になろう。

国王が何をしても批判をしてはならないとするのは、いけない事であり、
憲法違反である。
私はあえて批判を受けたい。

何故ならば、それにより人々が何に同感し、何に意義を唱えているかが
判る為である。批判を受ける事は恐ろしい事では無い。
もし批判してはいけないとするのであれば、それは国王を人として
認めていない事である。
批判が無いから良い国王とするのは誤りである。
心の中で、国王はおかしな事を言ったりやったりしていると思っている人が
いれば、是非その理由を述べて欲しい。』

次に国王は現政権は拝金主義に傾いている様に思うと述べられた。

『首相と首相夫人はこれからのタイの40年間に付いての方向付けを
行って欲しい。
前任の首相はタイの出費を極力抑えた結果、退任となった。
首相は野党の言う事を聞く必要も無い。
倹約に向けての政治を行って欲しい。
それは自給自足を原則とする事である』

また同時に、穀物による石油エネルギー代替の重要性等にも言及された。

最後に、国民が本日の誕生日を祝福してくれる事に感謝の意を表され、
政府、野党もお互いに批判しあう事を慎み、考え過ぎ、過剰反応する事を
止め、もし高官が自己の職務を正しくまっとうすれば、必ず国は栄えると
結ばれた。

誰にでも判るお言葉で述べられたが、暗にタクシン首相並びに夫人の
金、金、金の方向に不満を述べられたものと思う。
また、ある新聞社の社主の批判に対し、多額の損害賠償の訴訟を起こし
泥仕合を行っている事に対するけん制でもある様に感じた。

会場に居た高官の女性の一人があくびをした事を目ざとく見つけ、
「この中にはかなり疲労した人が居られる。従って、本日はこれくらいで
切り上げる」と述べられた。
この女性の心中は如何であったかと思う今年の幕切れであった。

このスピーチの3日後に、タクシン首相と彼の弁護士は、社主に対する
多額の訴訟の全てを取り下げた。
国王の諌める過剰反応を取り止めたのである。
社主は追及の手は緩めぬし、他の閣僚に付いても疑惑の調査を行うと
意気軒昂である。
1992年の再現にならぬ事を祈りたい。

この度、上場企業の株保有高が発表された。
第一位は昨年に続きタクシン・ファミリーで330億バーツ、約1000億円
である。個人としては、23歳の彼の娘が190億バーツでトップ、タクシン
首相夫人の兄が2位で166億、3位は不動産企業のオーナーで150億、
4位がタクシンの息子で120億バーツ等であった。

首相業をやると何故この様に金持ちになるのか、巷がまたまた騒々しく
成りそうである。

時事通信が選んだ今年の10大ニュースを発表した。

1. 総選挙でタクシン与党圧勝。
2. 日タイ経済連携協定交渉大筋合意。
3. 最南部の治安悪化。
4. 自動車生産100万台突破。
5. 津波被災一年、深い傷跡。
6. 経済成長率予測を下方修正。
7. 反タクシン キャンペーン。
8. 新バンコク国際空港、開港延期。
9. 豪及びNZとのFTA発効。
10. 鳥インフレンザ再発。

石油価格の高騰が(9.)よりも上に入る様に思うが、他は妥当な
選択ではないかと思った。

特にバンコクではタクシン首相の一人勝ち手法に異を唱える集会が活発に
開かれる様になり、有識者の多くが、タクシン首相が手法を改めねば、
解散もあり得るのではとコメントする事が目立って来た。

公平な万人の為の政治を行って欲しいと念じる2006年である。

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