M&A月報No.91 「国王スピーチ2004とスマトラ沖大地震」
毎年、国王は自分の誕生日に国民に向けスピーチを行われるが、
その内容がかなり過激な年もあり、今年も注目が集まった。
77歳になられた国王は、タクシン首相以下、集まった2万人を越える
人々の前に皇太子を伴って現れ、全内容はテレビで全国放送された。
タクシン首相に対し、若年層に大変懸念を抱いておられる旨、言及され、
彼らに力を貸すようお言葉を述べられた。
即ち、現在の若年層を、麻薬、飲酒、喫煙、騒音で耳を悪くしそうな
ディスコクラブにおけるダンスより遠ざけねばならない。
タイ国の将来は、彼等のこれからに掛かっている。
もしディスコの騒音で耳を悪くすると、この子供達の理解力が落ち、
将来創造性のある仕事が出来なくなる。
最近の15、16歳の子供の聴力が落ちているとの報告もある。
厚生大臣はこれ等の子供達の検査を早急に実施すべきである。
政府は耳の悪い人々に多くのお金を割いて補聴器の供給を行っているが、
このお金は耳が悪くならないようにする為に使われるべきである。
政府は子供達がディスコクラブに行って、大音響の音を聞かない様に
する施策を打つべきであると冗談もおっしゃった。
現在の様なストレスの多い時代には、人々を明るくする話題がいる。
喫煙も血流を悪くして、結果耳も悪くなる。
タバコも麻薬も思考能力を低下させ、また健康も害する。
禁煙運動は多数の高齢者を喫煙より解き放ったが、一方において
若年女性層の喫煙が増加した事に懸念を抱いている。
自分も過去には愛煙家であった。
しかし健康を害し、医師より止める様に言われそれを実行した。
首相はこの様な事に留意して欲しい。
テレビでマンガを見ていると、良いアイディアを出した人の上にライトが
点灯する。タクシン首相の場合は、これが衛星となる。
それも悪くないが、理解出来ない子供達も多い。
首相はラジオを通じて、毎週土曜日、国民に語りかけているが、英語を
使う場合が多い。これでは理解出来ない国民もいる。
もっとタイ語で行うべきである。
健康な子供達は長生きし、更に多くの年月を国の為に尽くすであろう。
今の子供達が70歳まで働いたとすると、タイ国は何処まで成長
出来るであろうか。
星にまで届くかも知れぬと結ばれた。
南部の騒動に付いては、既に王妃が言及された為であろうか、
ご発言は無かった。
又厳しいタクシン首相批判も無かった。
愛犬の話も無く、比較的に時間も短く、将来を託す子供達にのみ
言及された珍しい年であった。
平穏な一年と思ったら、26日、歴史的な惨事が発生した。
スマトラ沖に発生した地震で津波が押し寄せたのである。
地震とか津波には無関係と思って居ただけに無防備であった。
459年来の出来事だそうである。
タイのTVで“TSUNAMI”を連発している。
津波についての教育は一切無く、名称も無い、従って、無論
津波警報も無い。
多くの人々が異常を感じてカメラを持って海岸に飛び出し、津波に
さらわれたとの事である。
有名な観光地で年末であった為、富裕層、有名人が多く亡くなられた。
バンコクでも地震は感じられ、人々を驚かさせたが、幸いにも、何も
崩壊する事は無かった。
第一報で国王のお孫さんが付き添いの人と共に死亡のニュースが
流れ人々に激震が走った。
未だに正確な数字は分からないが、数千人以上が死亡された様である。
死体の回収が間々ならず、写真のみを撮って埋葬していると聞き、
同情を禁じ得ない。
救済の為に優先的に飛行機を手配している為、旅行者は大混乱だし、
プーケット等より逃げ帰って来る人々がバンコクに殺到し、ホテルが
満室となってしまった。
周辺国を合わせると数万人規模の死者が出た様で、歴史的な惨劇となった。
亡くなった方々のご冥福をお祈りしたい。
野党の国会議員並びに一部の有識者により、憲法記念日にセミナーが
開催された。
議題は“最高で不滅と言われた現憲法の改正について”である。
要旨は、
「余りにも強力で独断専行のタクシン首相により、タイの民主主義は
危機に晒されている。
首相は国のCEOと称し、人民の権利を無視し、チェック・アンド・バランスの
機能も働かない様にし、独裁を欲しいままにしている。
我々は監視人になる必要がある。
現在は憲法が無視されている状態で、国民は片目を開けて寝ていなければ
ならない。何故なら、タクシン首相を批判すると、警察に監視され何時逮捕
されるかも知れぬ。
ジャーナリストや批判を述べる人々には恐怖の日々となっている。
法廷に引っ張り出された人、行方不明の人、殺された人、枚挙に暇が無い。
現在、憲法は曲解され、権力者の良い様に解釈され使われている。
過去に例えば、7名の有識者を国王に選別頂き、彼等が政府の
お目付け役になる様な憲法改正案も出している。
現在の国の運営は首相が半分、国会が半分で運営されている。
今後は更に首相のパーセンテージが増え、国会が無力化される事が
懸念される。閣僚会議も学校の様であり、首相からの一方通行である。
この様な首相独走型を抑える憲法改正が必要である」
と結んでいる。
タイミング良く、FINANCE & BANKINGという雑誌が、長者番付
(500人)を発表した。
上場企業の株を幾ら持っているかとの分析である。
1位はタクシンの娘で540臆円。
2位はタクシンの義理の息子で458臆円。
3位は不動産経営者。
4位はタクシンの息子で330臆円。
28位がタクシンの一番下の娘。
65位タクシンの妹。
321位が何とタクシン婦人で5臆円。
殆どの自己保有株式を子供に譲渡した様である。
贈与税の無い国が羨ましいと思う日本人も多いであろう。
上場企業TOTALの株価の40%は現政府に関係が深い10のファミリーで
保持されており、首相一族は10%、1000億円を超える保有高と結んでいる。
CEO首相とはこんなに儲かる商売であっても良いのであろうかと、批判の
声が上がるのも理解できる気がする。
来年2005年の2月には総選挙が行われるが、愛国党の勝利、タクシン
首相の続投は間違い無いと言われている。
さらにこの状態が4年間続くと、この国はどうなって行くのであろうか。
底辺の話題として、2005年の最低賃金が発表された。
BKK周辺、プーケット等では5バーツ上がり、各々175、173バーツ/日と
なり、その他地域では4バーツの上がりとなった。
タクシン一族との隔たりを感じる。
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