M&A月報No.90 「タイ南部騒動と東アジア首脳会議」

タイ南部の騒動はたいした事ではないと思っていたが、少々、雲行きが
怪しくなって来た。

約2,000人が、既に逮捕されている6人の釈放を求め警察署に押し
寄せた所、その内の約1,300人が逮捕された。


彼等が軍の駐留地に護送される途中、窒息と日射病で78人もが
死亡したと報道された。
当局は人道的に扱ったと釈明に努めているが、護送途中にかくも多くの
人々が死亡するのは尋常ではない。
タクシン首相は、理由の如何を問わず、家族に対する賠償金の支払いを
明言し、哀悼の意を表明した。

又、タクシン首相は、全国32県のイスラム指導者約400人、イスラム
教国の大使12人、さらにイスラム系国会議員10人を招いて、
”何が問題か教えて欲しい。やれる事は直ぐに着手する”
と協力を求めた。

行方不明者も多く、報復と見られる殺人事件もあり、タクシン首相は
今月チリで開催されるAPEC首脳会議に欠席し、チャワリット副首相を
代理出席させると表明した。

しかし、これでは各国首脳に失礼であり、且つ、せっかくSET UPされて
いる首脳会談も不成立となる事に対する批判の声も多く上がり、前言を
翻し出席となった。従来と比し、今回の騒動の深刻さが判る。

国王よりも、問題を注意深く扱い、地元住民の声を良く聞き、それを取り
入れるよう首相に注文も付けた。
下名の記憶にはない事であるが、シリキット王妃がタクシン首相以下
930人を宮殿に招き談話を行った。
”無実な人々が殺傷されており、法が国民を保護出来ず、住民は恐怖の
中で暮らしている。宗教には関係なく、人々は思いやりを持って暮らして
行くべき”
と説いた。

又、王妃は家主を殺害された家族に約1,000坪の土地を買い与え、
今後の生計に困窮せぬような配慮を行った。
今後公平なる調査が行われるか否かが鍵となるが、テロに発展して
行く事が懸念される。特にイスラム系の各国より批判の声も上がっている。
この騒動がBKK近郊に波及せぬ事を念じている。

ラオスの首都ビエンチャンで東アジアの首脳会議が開催された。
日本より小泉首相も出席した。
この機会に、小泉首相は比のアロヨ大統領と首脳会談を行い、FTA締結
交渉での基本合意を最終確認した。

物品、サービス、投資等の分野で関税撤廃、自由化を謳うもので、
2006年より発効する。
日本にとっては、シンガポール、メキシコに続く3カ国目となり、今後の
対マレーシア、タイ等との交渉にも拍車が掛かる事が期待出来る。

ゴー・シンガポール前首相に揶揄された
“中国は大きな像、日本は冬眠中の雁”より少しは前進して欲しい
ものである。

焦点であった看護士に付いては、国家試験受験による資格取得と
養成学校での看護福祉資格取得の2コースを設置し、受け入れ人数に
付いては今後の協議となった。
看護士の派遣に付いてはタイも強い願望を持っており、今後の交渉に
参考になるものと思う。
しかし、かなりの日本語のレベルが無いと試験にパスするとは思われず、
受け入れ基準が高すぎる感は免れ得ない。

タクシン首相によると、毎年観光客は約1,000万人が来ており、
6,000億バーツの収入が得られている。
今年は1,200万人が見込める。
これを年間2,000万人にまで拡大したい。
尽いては各県知事は観光客の拡大に向け努力せよと指令が出され、
各県で人口15万人当たり1億バーツを拠出する旨申し添えた。
観光産業への深い思い入れが感じられる。

この程、大手不動産会社のバコック首都圏における高級オフィスビルの
賃貸料の調査結果が報告された。
これによると5年前に比し、32%上昇している由で、空室率も11%と低く、
2年後には更に賃貸料は上がり、3年後にはオフィスビルは不足すると
発表した。アパート、コンドミニアムはどんどん建設が進んでいるが、
オフィスビルは少ない。
今後は少し方向を変えて貰いたいものである。

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