M&A月報 No.192「反政府デモ騒動記其ノ弐」
2月2日、総選挙は行なわれたが、20%の地域では、デモ隊に阻止され
投票が行なわれなかった。
地方でも投票率は50%を切り、バンコックでは20%程度に留まった。
しかし、バンコクの完全封鎖を宣言したデモ隊側も、参加者が2万人を切り、
その影響力が減少しつつある事も判明した。
今後、選挙管理委員会が、どの様な対応に出るかに注目されているが、
新政権誕生にはかなりの時間が掛かる事が予想される。
デモ隊が封鎖する一箇所を治安部隊が排除しようとして、遂に衝突、
5人の死者と多数のけが人が出る事態となってしまった。
警官の一人が、腰に付けている手榴弾を誤って落とし、それを慌てて蹴飛ばしたものが暴発、
それに驚いたのか、一部治安部員が催眠ガス弾等をデモ隊に発射、それを後方で隠れていた、
私服の軍隊の射撃兵が警官を狙って狙撃、殺害したもの等の解説をしてくれるタイ人がいるが、
真相は不明である。
その後も各地区で特に真夜中に、発砲や爆発が起こっているとの報道が連日の様にあるが、
住んでいる者は殆ど気付いてはいない程度のものである。
以前より懸念があった米の問題が急浮上してきた。
農民表獲得の為、選挙の公約で、農家の米を高く買い上げる政策をぶち上げて来たが、
その支払いが遅延してきた。
今回のデモ騒動に刺激され、農民の不満が道路封鎖等のデモ的手段で表面化して来た。
バラマキ政策ゆえ、元々無理があり、政府は高値で買い上げるものの、安く外国に販売すると、
その赤字が表面化する為躊躇、一気に在庫が膨らんだ。
これを地方の有力者が掠め取る疑惑も表面化、政府が何処に幾らの在庫があるか把握して
いない事も判明、一気にスキャンダル化した。
なんとか売り先として内定していた中国が、このゴタゴタに嫌気となり、キャンセルしてきた。
そこへ今回のデモ騒ぎ、政府はこの対応に振り回され、農民への支払いが滞り、一方、
各銀行もこれへの資金の貸し出しを渋った為、農民の怒りは頂点に達した。
この無理のある政策を公約として当選し、国に多額の負債を計上する懸念、在庫管理の不備による
管理責任者としての落ち度、大切な農家を大混乱に陥らせた責任等々でインラック首相を
相手取った訴訟が起こる事が懸念され出した。
インラック氏個人としては、首相にもなり、巨額の富もあり、デモ騒動よりはさっさと手を引きたい所であろうが、
この米騒動でそうは行かなくなった。
即ち、首相を辞任すると、反対派の内閣が出来る可能性が高く、そうすると世界中でそうであるが、
前首相が何かの罪で法廷に引っ張り出され有罪となっているが、その二の舞を恐れているのである。
その何かの罪になり得るのが、上記の米問題であり、従って簡単に下野出来ぬのである。
汚職委員会のトップの自宅が、何者かによって狙撃された。
タクシン氏支持者派は、各種裁判により、インラック首相等が有罪とされる事に不安を感じ、
脅かしに出てきたとの感は歪めないが、どうも長期化している両者の対立も、
次第にデモ側有利な展開となり出したとも感じられる。
多くの富裕層のタイ人達は、タクシン一族の国外逃避は時間の問題と言い出しているが、
果たして如何なものか注目してみたい。
一方、過激な親タクシン派よりは、国を二分しようとの暴論も出てきている。
正常な選挙で、新政権誕生までには二年ほど掛かりそうである。
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