M&A月報 No.201「反政府デモ騒動記」
毎年、タイでは何か大きな事件があるなと思っていたが、昨年は年末近くに成るまで何事も無く、
この月報にも、余り書くことが無いと感じていたら、昨今、TV、新聞で賑やかに報道されている
デモ事件が発生した。
1月13日、10万人を越える人々の参集に成功し、タクシン一族の完全なる政界よりの排除を求め、
バンコク市内の主要交差点7箇所の封鎖という戦術に出た。
これにより、一部日系企業に於いては、会社を休みとし、自宅待機を命じた所も出たが、
多くの企業は通常業務とした。
しかし、従来は自動車通勤をしていた人々も、交通の混乱を危惧し、BTS/地下鉄/バス等の
公共交通機関を使用しての通勤となった。
有事の時にはいつも参考とする街の中心に位置する所にある、ゴルフ場を観察すると、
さすがにこの日は一名のPLAYERもいなかった。
しかし、後刻、聞く所によると、キャディーが来ないので、PLAYしなかった由でもあった。
過去の赤組の時の騒動と比較すると、今回は非常に非暴力的であると感じている。
百貨店やホテル等も営業しており、デモ参加の人々の表情も温和であり、悲壮感は感じられない。
箱を備え付ければ、大変な額の寄付金も集まっている様で、資金は潤沢であるとも感じられる。
本来、タクシン派である人々も、このデモに参加している。
理由は、日当と食事の支給が行なわれているからの由で、驚くべき事象でもある。
14日は、だいぶ事情も分かったし、封鎖されている交差点も良く分かって来たので、
運転手の反対を押し切り、車通勤を試みた。
交差点では、簡単な鉄の衝立で道路を封鎖し、如何にも田舎のおっさん的な人物数人が、
張り付いていた。
そこを通過したい車には、事情を聞き、中には通しているものもあった。
車一台分が通れる程の空間は作り、ある方向には車が通行出来る様にもしていた。
従来は、殆どが手動の信号機が自動に切換えられており、驚く事に周りには
警官の姿は全く無かった。
U-TURNを迫られる車の運転手も、侵入不可を指示されると、誰も文句を言わず、
忠実に従っているのには唖然とさせられる。
ある交差点のみを迂回すれば、車出勤が出来る事も確認出来た。
平和的であり、交通渋滞も寧ろ緩和されて居り、日常生活にも支障は無く、
何も文句を言う点は無いのであるが、一つ問題は、真夜中まで、封鎖している交差点に、
巨大な音響システムを持ち込み、絶叫とカラオケを行なう為、周辺住民の安眠を
妨害する事である。
悲壮感は全く無く、テント村を開設し、食事やカラオケを楽しみ、まるで盆踊り大会
もしくは縁日が行なわれている感じである。
警察・軍隊も、目下の所、静観を決め込んでいるのか、全く動きが無い。
17日、休校の多かった学校が、ほぼ全面的に再開した。
封鎖箇所がある事も影響し、また悪名高い大渋滞が起こり出した。
昼食時に、歩いて封鎖箇所に行ってみた。
日々リヤカーで引っ張ってきて、出店を作る諸道具が道の追い抜き車線側を占拠、
人々は歩行者天国を満喫、主催者は、巨大な音響システムによるカラオケを楽しみ、
屋台は広々と道の中に展開し、お祭り気分満開であった。
しかし、南部よりの人々が多く帰ったとの情報もあるが、明らかに参加者の数は減ってきている。
報道では、一万人強、即ち、13日の10%に落ち込んでいる。
しかし、遂に何者かが手榴弾の様なものを群集に投げ込む事件が二件発生した。
死者も出る事態となったが、幸いに平静は保たれている。
目下異常気象で、早朝はかなりの冷え込みとなっている。
道路にテント、さぞかし寒いことであろうと思うが、未だにデモ隊は駐在している。
しかし人数は、更にかなり減ってきた様にも感じられる。
深夜までの絶叫カラオケが無くなった事は歓迎すべき事だが、時間と場所によっての
大渋滞が問題化して来た。
21日遂にタイ政府は非常事態宣言を発令した。
これは、今後60日間、集会の禁止等を取り締まるもので、デモの鎮圧に
愈々乗り出すのかの感がして来た。
当地新聞の風刺マンガでは、
“インラック首相が、べそをかきながら、私、辞めたいとこぼす。
それを海外に居る、タクシン氏風の男性が、お前は操り人形だ。勝手なことは言わせない。
黙って俺の言う通りにやれ”
といったのが出たが、インラック首相の本音は、
“もう結構。私辞めたい”と言いたいのだと感じている。
その首相をさらに追い込むように、最大の懸案である、米の在庫問題で、
インラック首相の責任を問う審議が提案された。
中国に一部売却した様であるが、その取引に、不正疑惑があるというものである。
辞任したくとも出来ない首相、タイの先行きは全く不透明のままである。
景気の先行きも懸念されるが、それをよしとする、富裕層が多く存在し、彼等がデモ隊支援に
回っている事も騒動を長引かせる原因となっている。
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