M&A月報 No.188 外交に注力するインラック首相と俄かに騒がれ始めたタイ洪水事情

現野党の民主党党首でインテリのアピシット氏(元首相)が、
支持者を前に講演した中で、何を血迷ったか、
“もし愚かな女性のコンテストがあれば、現首相に勝てる者はいないであろう”
と述べた。


これに首相の側近が強く反発、“発言に注意すべき”と強く批判した。

事の起こりは、インラック首相が女性の地位向上に努める為、
“スマート・レディー”コンテストをやると発表した事を受けて、
つい日頃の本音が出てしまった様に感じる。
更に、最近評判の良い外遊ばかりに注力し、国会には殆ど顔を出さぬ事も批判し、
内政問題より逃避しているとも批判した。

見かけは素晴らしいが教養が無いと、巷では言われているので、
当たらずとも遠からぬポイントとは思うが、いささか言い過ぎの感はするが、
賢くもインラック首相は沈黙を決めている。

”景気を煽る様な内政施策はして欲しくない。
首相には、受けのよい当たり障りの無い外交のみやってくれていれば良い”と
する多くの上層部の人々よりすれば、
現状ではインラック首相は結構な首相という事になるのであろう。

タイにとっては恥ずかしい事だが、タイ航空の飛行機が着陸に失敗し、
機体が破損、その後の修復に4日間以上が費やされ、
航空機の発着にかなりの乱れが生じた。

この機体の履歴を辿ると、ブレーキ系統の事故が過去にあった由で、
今回は操縦士の失敗では無く、機体整備の不備で片付けようとし、
何とかタイ航空の不安を払拭しようとの努力が為されている。
その最たるものが、真っ先に、THAI AIRの機体表示を何者かが
塗りつぶした写真が掲載されたが、逆効果の涙ぐましい努力と感じた。

国の行く末を考えてくれるはずの、霞ヶ関官僚は、
何を考えているのかと疑問に思う数字が発表された。
国の借金が1000兆円に及ぶ中、来年度の概算要求が、
過去最大の99.2兆円となった。

企業/家計に例えれば、リストラを断行し、支出を絞れるだけ絞るのが
当然であろう、なのに銀行が幾らでも貸し出してくれる故か、箍が緩み、
使えるだけ使おうという魂胆とすれば、背筋にぞっとしたものが走る。

雀の涙程度にしかならぬ消費税アップに付き、膨大な数の有識者を
呼びつけ意見を聞いているが、これに掛かる費用は幾らになっているのであろうか。
無駄に税金を使い、ガス抜きをしているとしか感じられない。

首相が10月上旬に決心されるとの事であるが、この様なガス抜きを
しているという事は、第三の矢の経済成長戦略に全く自信を持っていないと
言う事ではなかろうか。又は思慮遠謀に、景気減速、財政破綻、円安、
超インフレに持ち込もうという算段であろうか。
この概算予算の要求を見ると、残念ながら、日本企業のアセアン進出は、
止まりそうにないと感じざるを得ない。

予算は取り付けたものの、延々と具体的に治水工事が進まぬ中、
雨季真っ只中の今年も洪水の話題がにわかに熱くなってきた。
一昨年前の大洪水で大被害を受けた中部アユタヤ県の住宅の一部が浸水
したことを受け、近隣の工業団地においても警戒が強まり、
政府が工業団地を防御する準備を始めたと報じられた。

工業相は、「洪水対策が唯一完了していないサハラタナナコン工業団地の
状況が心配だ」と述べているが、前回の大洪水で被害を受けた工業団地が
防水堤の建設を完了したのに対し、同団地は依然、計画の30%しかできて
いない状況があることは事実で、もし万が一、あのような洪水が起きれば、
再度、団地ごと沈んでしまう可能性は大いにある。

しかしながら、一昨年前の大洪水は人災とも言われており、
現状ではダムの貯水管理も充分適切に機能しているので、
あのような大洪水は二度と起きないかとは思うが、タイ中部、東部、東北部に
おける今後の工業団地の新設・増設計画やBOIのゾーン制が廃止された後の
産業クラスターによる関連業種の集積形態への移行、
そしてまたさらなる外資進出等を鑑みると、工業団地の洪水よりの防御は急務であり、
且つ国の重要課題として引き続き注力していかなければならない。

政府の意志決定を行っている本当のリーダーは誰か?という世論調査によると、
やはり過半数の62.4%が「タクシン元首相」と回答し、
「インラック首相」と答えたのは37.6%にとどまった。
また、政府が取り組む「国民和解」が達成できるかどうかについては、
「できる」は62%、「できない」は38%であった。
また、その対立の原因に関しては、「政治家」80.3%、「法律と憲法」54%、
「メディア」51.2%、「行政官庁」35.8%、「一般国民」29.7%、
「学者、独立機関」23.9%の回答であった。

今国会は、恩赦法案、憲法改正法案、2兆バーツ借款法案などの重要法案が
目白押しであるが、これらの法案の可否が今後のタイの政治や社会、
国民和解等行く末を左右することは間違いないであろう。

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