M&A月報No.151 「マプタプット工業団地問題」

12月5日は国王の82歳のお誕生日。
毎年、恒例のスピーチを大変楽しみにしているが、昨年に続き、
今年もご健康に配慮され皇太子殿下が代役を勤められると発浮ウれた。


一部新聞報道では、国王として言及したくない点があるので、今年も
中止されたのではないかと論評する記事も出た。

しかし病院でご静養中の国王は、5日、病院よりお出になり、皇族、閣僚等
一部高官の前にお姿をお見せ下さり、ご祝賀をお受けになった。

国家が平和である事が私の幸せだと述べられ、暗に二手に分かれて
いがみ合っている事を自分は非常に不幸せに感じていると述べられた
ものと感じた。
その他の全ての祝典は皇太子殿下他に代行を命じられた様である。

恒例のスピーチが無かった事は残念に感じているが、お元気なお姿を
お見せ頂いた事は嬉しく思っている。

各種式典は例年通り華々しく行われ、不景気風を吹き飛ばす様に花火も
各所で盛大に上がった。
2010年が希望に満ちた、明るい年になる事を念じたい。

2009年12月5日開通といわれていた空港リンク鉄道であるが、
結局準備が間に合わず、5〜7日は試乗のみと成り、正式な開通は
今年4月に延びた様である。
駅周辺の整備状況を観察するに、とても営業を開始出来る状態では無いと思った。
インフラを良く整備してから開通して欲しいものである。

度々言及しているエリート・カードの件であるが、これは6年前にタクシン
政権時代に国が約束し、発行した会員券である。
現政権となり、目下廃止の方向に向かっている訳であるが、それに対し、
39カ国よりの既存の会員は

“タイ政府とは政権が変われば前政権の約束事は反故にする様な国なのか”

と迫っている。

前政権が約束した事を変更する時は、当然、現状に勝る条件が提示されて
然るべきであると迫っているのである。

鳩山内閣の普天間基地の移転問題を米国側より見れば、前政権の約束事を
変更する時は、当然、それに勝る新提案となって然るべきと迫るのが当然と思う。
その様な条件が出せるのであろうか。

鳩山首相の発言を聞いていると、米国、沖縄市民を満足させる様な、
その他の移転先がある様に感じるが、そうであれば、決定を先延ばしするの
では無く、素早く動き、決断を示すという事も重要ではないかと感じている。

一方、日本の新聞を読んだり、テレビの報道を見ていると、数年前にその自論を
お聞きしたアナン前首相のコメントを思い出す。

論旨は、

“日本の国民は何故終戦直後にアメリカより押し付けられた憲法を、半世紀以上
経過した今も、全く不備が無く、これに勝る憲法は無いと考えているのか不思議である。 

日本が有事の時に本気でアメリカ国民が日本の為に血を流すと思っているのか。
アメリカが致命的な打撃を受けると思わぬ限り、アメリカの関与は限定的なものになろう“

日本ほど自国の安全を他国に依存してしまっている国は世界の何処にも
存在せぬと言いたかったのだと感じている。

アメリカの意識は、石油とテロの脅威よりその根源を絶ちたいという二点では
無いかと考えている。

アメリカは不快に思っている、日米関係危うし等々を書く前に、諂い外交、
アメリカ一辺倒、国の安全は金で買う、こんな事で良いのかとの論評も
読んで見たいものである。

有事の時に、アメリカ人はまずその国の国民が先に血を流せ、その後アメリカが
出動するという意見を述べる人も多いと聞く。

全く仮定の空想の世界であるが、遠い将来、もし日本が中国の属国になる
危険が出た時、アメリカは日本の為、中国と交戦するのであろうか。
疑問を感じている。

今回の普天間基地の問題は良い機会と思う。
今後の自国の防衛を如何に考えるのか、改憲も含め議論する時期に
来ている様に感じるし、東南アジアの国よりも日本の米軍一辺倒の現状を
危うしと指摘されている事に注目すべきと思う。

東南部の沿岸沿いにマプタプットという大きな工業団地がある。
主に重化学工業の大企業が操業している。
そこに65社といわれる更なる新規参入が計画されていた。

一昔前の日本と同様、そこに生活する住民より、悪臭、水質等による健康被害、
漁民よりは漁場の悪化等公害問題の訴えがなされていた。

国、団地公社、企業は因果関係無しと住民と争って来た。
しかし遂に最高行政裁判所より住民勝訴の判決が出、新規参入65社に
付いては、工事の中止命令が出た。

これに対し、企業、各国の商工会議所等が猛反発、今後のタイへの投資に
悪影響を与えるし、生産量の減少により、コスト上昇、輸入の増大が懸念されると
対立を強めた。

国は人望がある元首相のアナン氏を委員長に任命し、4者委員会なるものを設立した。
アナン氏は早速現地を視察し、住民と意見交換も行った。
併せ、公社、企業の代侮メとも会談したが、そこでは、

“公社は公害と健康問題に対する対処が遅すぎる。自らの信用と信頼回復に
努める義務がある。この問題は役所仕事と想像力の衰退を映したものだ”

と強く非難した。

しかし、一方、

“政府、企業、地域住民等が一致協力すれば解決出来る問題“

ともコメントした。
早速、環境と健康への影響調査を指示した。

工業化が進むにつれて、その他地方でも問題の声が多く上がっている現状で
あるが、今回の司法の決定は遅すぎたとの感は免れぬが、やるべき事を
やる時期に来たと感じている。

未だに各種測定器も無いタイ国であるが、川、海、山への不法投棄、垂れ流しの
企業が無くなり、美しい自然環境が取り戻される事を念じたい。

今後の取締まり体制如何ではかなりのコスト上昇になる企業も増えるだろうし、
環境への対応事業は活況を呈する事が卵ェされる。

賄賂、汚職の汚泥で、水俣病患者の様になった地域住民に、やっと司法の
まともな判決が示され、人望あるアナン氏の登場で光明が見えて来た事を
嬉しく感じている。

既に進出している企業もこれから嵐閧オている企業も押しなべて大企業である。
これ等世界的な企業が、環境汚染を犯しているとは信じ難い点も多い。

検証の結果、数社に付いては工事再会の認可が出る見通しとなってきた。
今回の最大の問題は汚染物の処理を一手に引き受けている独占企業の杜撰な
対応が諸悪の根源と思っている。
この企業に、何時調査のメスが入れられるのか注目している。

米国よりの通報で、北朝鮮よりウクライナに輸送されると見られる、16億円程度と
みられる、大量の武器が積まれた輸送機がバンコクで捕獲された。
6名程度の白人関係者が併せ逮捕された。

北朝鮮は海路のみでなく、空路でも武器の輸出を行っている現状が見つかり、
今後の取締りが強化される見込みである。
タイはその中継地点として、有難くない状態にある事が判明、関係者は緊張している。

世界の首脳を集めCOP15が開催され、詳細が報道されたが、帰国した
アピシット首相のコメントは“失敗であった”との非常に冷たい発言であった。

一方、日本よりの報道では、令夫人を帯同し(他国では余り無かったと感じて
いるが)にこやかに笑みを浮かべ往復し、“有意義で成功であった”とコメント
した鳩山総理とは、対照的なコメントであった。

この根底には今回の大会議には基本的に無理があった様に感じている。
タイを含む発展途上国よりすると、核開発の様に、大国は好きなだけ実験を
繰り返し、環境破壊や汚染をばら撒き、開発が終わると、今度は一転、
一方的に保有は不可、実験等は出来ぬと言って来る。
“貴様ら身勝手だ”の気持ちが噴出したものと感じた。

今日の温暖化を招いた先進国が大きな代償を払い、率先垂範をまず示すべきと
タイ等は思っている様に感じた。

今年も一年があっという間に過ぎてしまった。
国王のご健勝をお祈りしつつ、今年は景気が回復し、政治も安定、騒動の無い、
明るい、希望に満ちた年になる事を念じている

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