M &A月報No.106 「続・タクシン首相大騒動2006」
連日、新聞、TV等で、総選挙で民意を問うというタクシン氏と、総選挙では
勝ち目が無いので、総選挙はボイコットし首相に辞任をせまる野党との
マスコミ合戦や集会が続いているのは事実であるが、今朝ほどのNHK
ニュースを見て愕然とした(3月3日)。
“海外安全情報センター”よりの発信であるが、ニュース・ソースは外務省で、
タイへの渡航は気を付けろとか、デモがある周辺には行くなとか、日本人
である事が分かるようにしろとかの注意情報である。
在住している我々からすると、全く平穏無事、タイ人も1992年の流血事件
の事は誰も忘れてはいないし、5万人規模の平和な集会で何を慌て
ふためくかの感を持った。
彼等はマスコミ以外のニュース・ソースから何か貴重な情報でも得たので
あろうか?軍隊、警察、政府関係者と接触したのであろうか?
否と感じる。
高級を享受する外務省エリート官僚が、この様な情報を、この時点で
発信する事で業務をまっとうしていると思うのであれば、これぞ正しく
税金の無駄使いと思う。
日本大使館も今年中にバンコクの一等地に、新築をし引っ越す予定と
聞いている。
企業はリストラで悲鳴を上げている時に、何とも違和感を感じる的外れの
情報提供であると、怒りすら覚える事象である。
”邦人にけが人でも出ると、俺は注意した、責任は俺には無い”と
言いたいんであろうと推察する。
これでは狼少年である。
真に危険が迫った時に情報は出して欲しいものである。
観光を計画している皆様に、安心してお越し下さいと言いたい。
未だにタイ人の間では絶大な信頼と尊敬を集めているプレム枢機卿
(元首相)の門前で爆発騒ぎがあり、通行中の白人が怪我するという
事件が発生した。
彼は今回の件では中立の立場を取っており、彼との会談の翌日に
タクシン首相は解散に踏み切っており、何故この様な脅しの爆破を
彼の門前で誰が何の目的で行ったのであろうと論議を呼び起こしている。
国王以外で今、タクシン首相に辞任の説得を出来るのは同氏以外には
無いとの見方が大方で、同氏の動きに注目が集まっている時だけに
色々の憶測を呼んでいる。
もしこれが、タクシン首相の支持者が、反対派の動きを鎮圧するための
口実にやったとすれば、事は大問題化する恐れがある。
1992年5月の流血事件の際に、国王が当時のスチンダ首相とチャムロン
バンコク知事(今回、また反対派のリーダー格の一人)を呼び付け、
“対立しても勝者は現れず、国と国民が敗者になるのみ”
と説き、二人を解任した時のVTRが何故か再放送された。
王室の許可が必要な映像が関係者が知らぬ間に再放送された事に
付いても物議を醸している。
これまた首相派の誰かが画策したのであれば大問題であろう。
有識者によると、今回の問題の根底には、ポチャマン首相夫人の横暴
にあると解説する意見も多い。
即ち、閣僚でも無いのに、閣僚会議に首を突っ込み意見を述べている、
高級官僚の人事に口を挿む等である。
これを首相が阻止出来ないというのである。
そうであればこれまた憂うべき現象である。
当地の女性の有力団体が、ポチャマン婦人に、政治混乱の沈静化を
首相に働き掛けるようにと陳情した。
これで問題が収まれば結構な事とは思う。
今回の問題を分析してみる。
筆者の見る所、タイには相続税が無いという点が最大の問題と思う。
日本であれば、2,000億円もの株が一族に名義変更されており、
これの売却がありながら、その一族が一銭もの税金を払わぬ等は
考えられない事であろう。
日本であれば、一体幾らの税金が徴収される事になるのであろうか。
一方、タイに於いては、この様な時はタンブン(喜捨、施し)が行われ
るのが仏の教えとされている。
せめて100臆円でもタンブンをしていれば今回の騒動は無かったと
分析する有識者は多い。
これを止めたのが、けちで有名なポチャマン首相夫人と言われている。
一方、相続税に付いては、しばしば国会に法案が提出されるが、
何時も多数決で廃案となっている。
今回、反対派の筆頭にも新聞社の金持ち社主が入っているが、
首相辞任は叫ぶものの、相続税に付いては何も言及しないし、
金持ちの議員達は何も言わぬし、マスコミも全く取り上げない。
もう一つの問題は、辞任は要求するものの、では誰が今後の国政を
司るのかとなると、候補者無しである。
1992年の時は、国王は民間人でも首相に指名出来た。
しかし、任命された当時のアナン首相は、これは今後大きな問題に
なると判断、国王に任命権はあるものの、国会議員より選出せねば
ならぬと憲法を変えてしまった。
国王の動きが余り活発では無いのは、現国会議員の中には、現在の
国政を任せられる人材がいないと見ているのでは無いかとも推測する。
何故、立派な方々が国会議員になろうとしないのか?
答えは、マスコミに、私生活、子供達の立ち振る舞い、また自分達の
資産内容が全て公表されてしまうといった点を上げる。
相続税かタンブンか、タイも岐路に来ていると感じる現象である。
23日、遂に今まで沈黙していた国王が動いた。
即ち、枢機卿17名をホアヒンに呼びつけ、現状を大変憂慮しているとし、
3時間に及ぶ会議を開催した。
しかし、結論めいたものは何も発表されなかった。
3月29日にバンコクの繁華街、サイヤム・スクエアで大規模な
反タクシンデモが開催され、オープンしたばかりのサイアム・パラゴン、
そしてサイアム・センター、サイアム・ディスカバリーセンターの3つの
ショッピング・センターが2日間の休業に追い込まれた。また、周辺の
多くの小売店、銀行も営業停止を余儀なくされた。
このデモによる経済的打撃は600百万バーツと言われ、また市内は
大渋滞となったこともあってか、世論よりは多くの不評も出ている。
一方、タクシン首相よりは、同国の政治危機が経済に打撃を与えて
いることを認めつつも、4月2日の総選挙後に状況が安定すれば、
今年の成長率5%は可能との見方を明らかにした。
4月2日の総選挙に向かい、益々今後の動向から目が離せない。
以上
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