M&A月報No.150 「タイ王国 VS カンボジア」
一時、国王陛下の健康不安説が流れ、人々を大変心配させ、且つ株価も
下落する局面を見たが、嬉しい事にこれは誤報であり、チャオプラヤ川で
行われたロイカトーンのお祭りに、お元気な姿で式典に参加となり、人々を
安堵させた。
王妃陛下、皇太子殿下も傍に付き添われ、国民の大歓声にお答えになった。
ただ残念な事に、万全を期されたのか車椅子でのご登場であった。
12月5日はお誕生日の祝賀式典が予定されている。
“Long Live the King”
当局は国王の健康不安説を流布した容疑者として3名を検挙、更に数名の
容疑者もいると発表した。
株価下落を目論んだのか、今後の捜査の進展に注目が集まっている。
新聞の第一面に“SAXENAを死なせるな”なる不可思議な表題が大きく出た。
1996年、バンコク商業銀行(BBC)が経営破綻した。
その時の財務アドバイサーがSAXENA氏(インド国籍)で、同行より数百万バーツの
資金を不当に引き出し、カナダに逃亡、その後当局はカナダ政府と粘り強い交渉を
継続、来年の時効を控え、遂にカナダが側が身柄引き渡しに同意、今回タイに入国、
逮捕されたものである。
このBBC破綻が、1997年の為替大暴落の引き金にもなったと言われている事件である。
彼は在任中に、その職位を利用して、100億バーツと言われる資金を不当に捻出、
それを20件とも言われる規模で、政財界にばら撒いた容疑を掛けられている。
その中には、現連立政権に関わりを持っている、ネウイン氏や当時の首相であった
バンハーン氏の名前も挙がっており、当時の情報を暴露するとしている同氏の対応で、
現連立政権に大きな打撃を与える危険性も含まれている。
野党は多くの著名人が本件に関わり、誰も彼に証言させたくないし、暗殺の不穏な
動きもあり、当局に厳重な警備体制で臨むことを要求している。
因みに、当時の頭取は詐欺や背任罪等で110年の懲役刑、226億バーツの
罰金刑を言い渡されている。
今後の進展では、今の快適な生活を脅かされる人々が多数出てくる可能性もあるし、
現政権の屋台骨が傾く危険性も秘めている事件だけに、目が離せない逮捕劇である。
カンボジアのフン・セン首相はタクシン氏とは個人的に友人関係にあり、家も用意し、
同氏を経済顧問として受け入れると発表した。
これに対し、タイ政府は内政干渉と猛反発。
同氏がカンボジアに滞在するのなら、既に有罪の判決を受けている同氏の
身柄引き渡しを要求するとコメントした。
またタイ政府は駐カンボジア大使を急遽召還し(カンボジア側も駐タイ大使を召還)、
不快の念を明確に表明した。
タクシン氏は
“何故この様な子供じみた反応をするのだ。自分はフン・セン氏に感謝している”
とコメントした。
今、何故、あえてカンボジアは同氏を受け入れるのか、種々の憶測が飛び交っている。
今後の両国の火種にならぬ事を念じているが、2003年以来となる両国の緊張が
急速に高まって来た。
上記の様な状況下、とある平日、タイで最も閉鎖的で何時もは閑散としている
名門ゴルフ場に赴くと、夥しい数の車、並びに軍服を着た人も混じる、多くの人々がいる
異様な光景に出くわした。
親交のあるオーナー会長もおられるので、何事かと聞くと、カンボジアの元将軍で
現在は国防の副大臣がお見えになっており、それをタイ国防省並びに陸軍の高官が
ご接待しているのだと言う。
自分は今日はPLAYするのでは無く、万事に手落ちが無い様に、見に来ただけであると言う。
マスコミは完全にシャットアウト。
建前はこの副大臣の誕生日のお祝いをしているのだと言う。
しかし、タイとカンボジアは現在も世界遺産に指定された寺院の所有権で時々撃ち合って
いる間柄で、且つ今はお互いの大使を引き上げた状況では無いか。
どうなっているのかと大変奇異な気持ちを持った。
カンボジアのタクシン氏に対しての急接近、また極秘裏にカンボジアの防衛関係の要人が
来タイ、それを一部タイ国防関係の高官並びに軍の高官がご接待。
この異様な出来事を考察し、タクシン氏が次に何をしようとしているのか等を憶測すると、
一瞬背筋にぞっとするものを感じた。
そこで、タイの有識者に聞くと、
”ゴルフの件はタクシン氏とは無関係に思う。
表面、政府同士が非難しあっても、また武力衝突していても、一方に於いて水面下で、
極秘裏に、両国の関連部門が緊密な連絡体制により、良好な関係構築に絶えず
努力している、これがタイ国なんだ”
と言う。
また家を用意したとのコメントに接し、長期滞在を想定したが、短期滞在だとも識者は言い、
結局その通りであった。
理由を聞いてみると、フン・セン首相の心変わりを案じたのでは無いかとの分析であった。
この様な外交が、微笑みの国といわれるタイ国の強かな面なのであろうか。
日本政府では考えられない様な動きである。
しかし、この数日間の熱烈歓迎でタクシン氏を招いたカンボジアの思惑は一体何で
あったのか、また短期間の滞在で寂しそうな後姿でドバイに向かったタクシン氏、
何とも不可解な出来事であった。
鳩山首相は東アジア共同体構想を打ち上げているが、当地に身を置くものとしては、
大変結構な方針であると思って歓迎している。
今般メコン川を囲む各国と、鳩山首相のサミットが東京で行われた。
新聞発表を見ると、道路整備他で日本は5,000億円ものODAを振る舞い、
中国に少しでも対抗しようとの姿勢を見せた様である。
国内ではコンクリートより人へのスローガンを掲げているが、メコン流域には、
コンクリートと汚職への資金投入ではないのか。
教育とか環境分野に限るべきと思うし、鳩山首相の持論を正してみたい気持ちがわく。
その新聞発表の写真を見ると、鳩山首相の左右に分かれて、アピシット首相と
フン・セン首相が固い表情で収まっている。
お互いに大使を召還し、非難の応酬、軍部も緊張体制となっている間柄である。
この時期に5,000億円もの大金を誰が、誰に、どの様に配分し、どんな費用対効果が
日本は得られるのか、その様な記載はどこにもない様に感じられた。
「タイとカンボジアの現在の緊張した関係、両者手を携えて地域の発展にお互い
協力し合いましょう」とは、とても言えぬ関係になっている事を指摘した様な報道に
お目にかかれていない。
鳩山首相が両首相に穏便に事に対処して欲しいとコメントし、両首相が大した問題では
無いとの趣旨で応じた様であるが、
「貴方達二人が現在のこの大変な時期に、子供じみた行いで非難合戦をやっている
状況では、この様な大金を投じる事は出来ぬ、両者の関係が回復してからこれは
実施します」
ぐらいの事は言ってはどうかと思うのだが如何であろうか。
それ程、今回のカンボジアのタクシン氏受け入れ表明は、危険なゲームと感じている。
それが只友情とは考えられない。
フン・セン氏は見返りに何を約束させたのであろうか?
領海問題、通信インフラ関係のみであろうか?
時期的な問題、その使い道に付き、日本のマスコミはもっと突っ込んで欲しいと念じている。
多くの方々が興味を持っているエリート・カードであるが、タイ政府の新たな見解が示された。
基本線は競売による民間への売却である。
骨子を1ヶ月以内に纏め、3ヶ月以内に売却先を決定したいというものである。
もしこの売却が不成功に終わった時は、その所轄を観光庁に移管するとしている。
この場合、現メンバーへの補償として24億バーツ、更に従業員の解雇に伴う補償金が
1,000万バーツが必要と試算している。
現会員2,570人中、契約違反でタイに在住しているメンバーが795名いるとして、
この調査も観光庁に命じた。
補助金が無い状況での競売先を見つける事は至難の技と思う。
観光庁が引き継いだ時、幾ら会員に戻し、どんなサービスは継続するのか、
また契約違反とはどの条項を指し、どんな基準で判断するのか等不明な点はある。
しかし、来年には何らかの形で現サービスが幕を下ろす事は覚悟する必要が
ある様に感じている。
タクシン氏の傀儡政権である事を自他共に吹聴し、2008年1月から9月までの
短期間であるが、首相となったサマック氏が肝臓ガンで他界された。
料理が好きで、TV出演し、礼金を貰った事で、首相の座を降りた御仁であるが、
74歳の若さであった。
バンコク知事も歴任されたが、そのご面相より、余り人気が出ず、饒舌ではあるが、
それが逆に禍根を残す事を連発した事もあったが、タクシン氏は又一人盟友を
失う事になった。
※編集部 注 ・・・当月報は2009年11月の時事をまとめたものです。
2009年12月以降の時事・動向詳細は来月以降の
月報でお伝え致します。
Comments are closed