M&A月報 No.215「暫定憲法第44条発動」

タイ中央銀行はシリントーン王女様の60歳の誕生日を記念し、王女様の写真が

載った100バーツ紙幣を発行すると発表した。

限定数しか発行しないとの事なので、コネを探し無事一枚入手した。

大切な記念品としたい。

Section44なる数字が新聞紙上を賑わしている。

これは昨年7月に公布された暫定憲法の中での44条で、首相に大きな治安権限

(絶対権)を与えるというものである。

一つには、諸外国より不評を買っている、戒厳令を解除したが、この見返りと

して、首相がこの44条を盾に、今後も反政府活動があれば強硬に取り締まる事

を述べたためである。これに対して、米国、EU,国連の関連部署より、また一部

タイのメディアよりも批判、懸念の声が上がった。 

首相は、悪意を持っている者には脅威だが、過半数を超える市民は支持している

事を強調、一歩も引かぬ気構えである。

我々を取り巻く人々も、目下の暫定政権を支持、むしろ懸念は、一年後に総選挙

が予定されているが、どの党の誰に首相をお願いするのか、その適任者の姿が浮

かび上がっていない点であり、むしろ、目下の暫定政権が更に継続する事を希望

する声が多い。

この様な、タイの過半数を超える一般市民の声を、何故世界のメディアは母国、

世界に発信しないのであろうか、大いに疑問を感じている。

米国、EU、日本等は、自国で問題が山積しているのに、目下の暫定政権で安定

低成長、平和・安全を享受しているタイに対し、余計な内政干渉はしないで頂き

たいものである。 

世界の動きとは面白いものと感じている。

即ち、米国、日本が制裁を加えると騒ぐと、中国が急接近、鉄道事業の一部を受

注する動きとなった。今度はEUが44条で騒ぐと、ロシア首相が急遽来タイし、

プラユット首相と会談、今後双方の貿易額を倍増する話で握手した。

プラユット首相は、自分が困難な事に直面している時に、貴方は来てくれた、真の

自分の親友であると持ち上げた。特に、日系製造メーカーの並々ならぬ努力で育て

て来た、このタイ国を、お粗末な外交で、ロシア、中国に渡すのですかと問いたい。 

もう一つは、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が、タイは不十分な

審査体制で航空会社に運航許可を出していると指摘していたが、今般、日本、韓国、

中国が、タイよりの新規就航や増便に対し、受け入れを拒否すると発表した。格安

航空会社やチャーター便等の日本への乗り入れが不可となる為、大きな騒動に発展

している。せっかくの観光事業に大きな障害を及ぼすため、首相がこれまた44条を

適用し、首相の強権により、本件の早期改善を図ると述べた為である。

本件の首相の強権発動は大いに結構と思っているし、早期に決着せねば、今でも日本

―バンコク便は何時もほぼ満席で、予約が困難な状況が更に悪化する事が懸念されて

いる。日本は、このタイの動きを評価、4月2日~5月31日までは、禁止を解除した。

二つ目は、EUが、タイの水産業界で強制労働などが行われている状況に改善がみら

れないとして、タイを「違法、無報告、無規制漁業国」として予備指定したことが挙

げられる。タイ政府は状況を改善するため法制度を整えるなどの努力をしてきたが、

EUは、不正を働いている者への罰則が依然として軽過ぎる等、タイ政府の改善に向

けた努力が不足しているという指摘をしている。

タイ政府は今後、特別委員会を立ち上げ問題の対処に取り組んでいく方針であるが、

同時に本件に係る首相による44条発動も検討している。

これもEUによる余計な内政干渉であろうか?

毎年タイがEUに輸出している水産品の総額は約2700億バーツ。予備指定から

6カ月たってもEUから状況の改善が見られないと判断された場合は、EUへの水

産品輸出が禁止されることになるが、海産食品大手は、今回のEUによる予備指定

による影響は軽妙で、それよりも、EUが今年1月から、タイ産品の一般特恵関税

制度を撤廃したことによる関税引上げのほうが影響が大きいとしている。

ソムサイ財務相は、家計債務残高が世界の平均的な水準の60%を、タイは80%と超

えている為、景気回復を後押しする為の、追加的な消費刺激策を実施する考えの無い

事を強調した。またこれまでの大衆迎合型の政策が続いた結果、家計債務が世界平均

を超えている。これまでのやり方は誤っており、債務がある時は節制が必要だと述べ

た。何処かの財務相に聞かせたい文言である。

懸案となって居る携帯電話の第四世代(4G)の入札であるが、900MHZ帯は12月15

日に、1800MHZ帯は11月11日に実施される事と成った。

各々来年の4月よりサービスが開始される見込みで、計4社に認許が与えられる。

本件で、約1500億バーツの経済刺激策が見込まれている。

今年のタイ旧正月ソンクラン祭り、別名「1年で最も危険な1週間」中に発生した交通

事故は、ソンクラン前の首相のTV演説における再三たる注意喚起にも関わらず、前年

比12.73%増の3372件、負傷者数は同10.35%増の3559人、また死亡

者数は364人となった。警察当局はこの1週間を最も警戒しているが、特に飲酒による

オートバイ事故が後を絶たず、当局による対策の手詰まり感も否めない状況が毎年続い

ている。

日本政府によるタイ人に対するビザ免除(ビザなしで最大15日間日本に観光目的で滞在

できる)効果で、訪日するタイ人が激増しているが、この程、日本政府観光局より、今年

3月の訪日タイ人旅行者が前年同月比29.9%増の9万2400人だったと発表した。

特に桜を楽しむツアーが大人気のようである。これで、2012年4月から36カ月連続

で各月の過去最高を記 録している。

日本の各都道府県も、タイ人旅行者の誘致やご当地物産品のPRを積極的に展開している。

日タイ関係は、製造や技術、種々のサービスに関する投資関係だけでなく、旅行や物産品、

農業分野等での関係も、今後さらに広がり、そして深化していくことが期待される。

今年のバンコク国際モーターショーは、予約台数は4万台に届かず、また前年実績から減少

しているものの、入場者は前年とほぼ同水準の約170万人であった。

景気低迷が続く中では満足できる実績と言えよう。

相変わらず、ロールスロイスやポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー、ベンツ、BMW、

ボルボ、レクサスなどの高級車の売上は好調であり、富裕層の積極的購入意欲の衰え知らず

を目の当りにし、羨ましい限りである。

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