M&A月報 No.166号 「日本の災害、タイの災害」

タイ南部でも豪雨により、土砂崩れ等が起こり多くの人々が被災した。
サムイ島では空港が冠水し、観光客は海軍の軍艦で輸送される状況も報道された。
41,000所帯が家を失い、死者64名、負傷者3万人、集まった義援金が
610億バーツと報道されている。

日本における津波の被害の凄さも未だに報道している。
しかし一番の問題は原発の放射線漏れではないかと思う。
当初よりNHKの報道を見ていると、有名大学の教授が出て来て種々解説してくれるが、
日本には原発の放射線漏れが起こった場合の対応マニュアルは無いのではと感じている。

政府関係者は無論、東電関係者も、原発納入業者も、放射線漏れを経験した
御仁は日本には存在しないので無いかと思う。
この件で、政府、東電を責めても無理と思う。

この未知の世界の対応に際し、原爆実験を繰り返し、多くの汚染経験を持ち、
また既に2回に亘って世界で起きた汚染問題に取り組んだ国々の協力を
何故当初より得ないのかと不思議に感じていた。
沸騰を抑える為に水、水が溢れ出したからタンク等々何とも手の打ち方が
次の事を考えていない様に思えて仕方が無い。

離散している瓦礫の処理を何故並行して行えないのか等も気になる。
日本の原発の技術は世界の最高レベルにあると述べた教授もいた。
しかし彼に“貴方は放射線漏れに対応した経験があるのか”と聞きたい。

日本の技術力を過少評価するつもりも無いし、誇りにも思っている。
しかし未経験、未知の分野で、あれば恥じる事は何も無いのではなかろうか。
もっと経験国の技術援助を強力に依頼すべきと思っている。

ここで日本がもたつき、大事になると、世界で原発導入が困難となり、
エネルギー供給問題が生じよう。
日本の素晴らしい技術力で太陽光発電等に更に拍車が掛かるとも思うが、
今は義援金をお願いするのではなく、経験したノウハウの開示を
お願いすべきと思っている。

一ヶ月以上経過して、国際原子力機関(IAEA)が各国より専門家を日本に
派遣して各種提案等を行うと発表した。
何故、日本が強力に依頼をし、即日行われなかったのか大変残念だし、
不思議に感じている。

IAEAが対応策を評価し、汚染水の海への放出も止むなしとのコメントを
発表後、放水していたら、かくも各国より批判を浴びる事も無かったのでは
無いかとも思っている。
タイ人が日本よりの魚を食べなくなった。
食の安全に付いても、IAEAより安全を確認後、発表して欲しいと念じている。

数多くのタイ人の方々より義援金のお話を頂き、各々のルートで実施された。
ありがたい事と感じている。

しかし一方、タイ人の富裕層はよくタンブーン(寄付)を贈与税が無い代わりに行うが、
各々が直接、学校/病院/孤児院/地方自治体等に行うのが通例で、
義援金はタイ赤十字にお願いしますと返答すると、戸惑いのコメントも返って来た。
これは裏返せば、当地では、義援金が入って来ると、これを摘み食いをする連中が
いる事を承知しているからでは無かろうかとも感じさせられた。

TVを見ていると、日本では多くの機関が受け入れを表明している。
一方、使い道は、復興や被災者の生活支援等に充てられると報道されている。
これ等の各機関は、総額幾ら集まり、何に使ったのかを発表するのであろうか?

今回は複数の県にまたがっており、政府が調整に入るとの事であるが、
出来得る事であれば、自分達に頂いた義援金は何処に使うかを、
事前に明示して貰えないものであろうかと、今回感じたが如何なものであろうか。
その使い道に同感を得うる所に義援金を振り込んで頂く案は出来ない相談なので
あろうかとも感じている。

毎年タイ人が待ち望むタイのお正月が終了した。
例年の通り、人々は道でも何処でも水を掛け合いお祝いをしていたが、
毎年水鉄砲が大きく豪華になって行くのには目を見張らせられる。

しかし一方、毎年残念ながら交通事故の件数が話題に上がる。
今年は、事故数2,584で死者188人、負傷者2,786人と発表された。
これは対前年比25%の減少ではあった。

お正月休み中であったが、かなりの警官が取り締まりに当っていたが、
飲酒運転が無くならず、40%もの高率が飲酒が関連しているものであった。

この間の外国人観光客は対前年比57%UPであったと報告された。
主な国は、マレーシア、中国、ロシア、韓国で、この大幅UPの原因は、
日本の震災により、これ等の国々の人々が行き先をタイに変更した為と分析していた。
この分、日本では観光客の減少が起こったのであろう事を案じている。

また、タイ政府は、震災の影響で日本人観光客が減少していることに対する
特別措置及び日本人への支援の一環として、今年5月から10月までの6ヶ月の間に
タイへ入国する日本人観光客に対し、査証免除(ノービザ)による滞在期間を
現行30日から90日に延長することを承認した。
これは就労ビザや家族ビザ(シングル)等で入国する外国人と同様の滞在期間となる。
これにより、日本人観光客が再びタイに戻ること、150~200億バーツ押下がると
試算されている観光収入が回復することを念じている。

6月もしくは7月には行われるのではないかと見られているタイの総選挙であるが、
急速にタクシン氏の動きが活発化して来た。
同氏にとっては、ここで敗北する事は、帰国の夢を閉ざされる事を意味する為、
この動きは良く理解出来る。
貢献党党首には自身の妹を擁立しようとしている様でもある。

そのタクシン氏が、選挙公約として示した主な政策は次の通りとなる。

・バンコクの洪水対策として全長30~60キロに渡る堤防の建設
・50万バーツ未満の借金の3年間の返済猶予
・地方自治体への最低1,000万バーツの支給
・農家向けクレジット・カードの創設
・大卒学生への最低1万5,000バーツの給与保証
・各大学向けの10億バーツの基金創設
・初めて住宅や自動車を購入する人への減税
・公共エリアでの無線通信「Wi-Fi(ワイファイ)」の拡充
・治安が悪化する最南部3県での特別区設置
・月額1,000バーツで賃貸する学生、貧困そう向け低層住宅の建設
・1年以内の薬物問題解決と4年以内の貧困撲滅
・来年までに法人税率を30%から23%に削減

一方のアピシット首相も、25%もの最低賃金引き上げを発表したりして、
躍起になって地方の貧困層の票の取り込みに取り組んでいるが、
実現するか否かが不明確な公約(日本で起こっているが)、
他方は現実に目の前に現金、目下の下馬評ではタクシン氏のかなりな
善戦を予想する向きも少なくない。

ウインブルドンでも活躍した有名なテニスプレーヤー、パラドーン氏が
立候補を表明して話題を呼んでいる。
日本と同様、有名スポーツ選手が立候補をするタイ国になって来たかと感じている。
日本とは違い、当地のメディアは比較的に冷ややかで、エースか
アンフォースドエラーの表題で、今後の選挙戦の成り行きに注目しているが、
日本と同様彼はかなりの得票数を得ると見ている。
彼の当落は、今後のタイの選挙に大きな影響を与えそうである。

タイ国トヨタ自動車は、日本の震災の影響で部品調達が困難になったことを理由に、
ついにタイでの自動車生産について減産に入ると発表した。
減産幅は生産能力全体の70%相当になる。
日系各社も減産を余儀なくされ、経済的損失としては総額750億バーツ
(約2,060億円)の損失になると見られている。

一方、タイ経済全体としては拡大基調である。
民間消費と民間投資の内需は好調であり、また外需も、輸出増と観光部門の
回復に支えられ、国内安定性は健全な状態が続いていると言えよう。

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