タイにも日本と同じように「労災」があります。

1973年に労働者災害補償基金The Workmen’s Compensation Fund)が設立され、その内容は労働者災害補償法(Workmen’s Compensation Act)によって規定されています。

従業員(労働者)を1名以上雇用する場合には加入が義務付けられており、その拠出金は雇用主(使用者)が負担します。

雇用主は、毎年1月末まで事業の種類や従業員の仕事の性質に応じて定められた率によって拠出金の支払いをします。

拠出率は従業員の総年収の0.2%から1%とされていますが、従業員の給与が年間240,000バーツを超える場合には240,000バーツを上限として計算されます。

従って拠出率が1%の場合、保険料は2,400バーツが上限となります。

 

労働者災害補償法はこれまでに様々な改定が行われており、最近では今年(2021年)の7月に以下の改定が行なわれました。

 

第16条 

労働者が負傷し、疾病に罹り死亡または失踪した場合、雇用主は葬儀を執り行う者に対し、省令に規定された料金によって葬儀費を支払わなければならない

(改定前)省令に規定された料金:40,000バーツ

(改定後)省令に規定された料金:50,000バーツ

この第16条は以前にも改定があり、元々は「労働者保護法で規定されている最低日給の最高額の100倍を葬儀費として支払わなければならない」となっていました。

改定を重ねて内容が明確に分かりやすく金額も引き上げられていることが窺えます。

ここ数年で行なわれた、その他の注目すべき改定点としては第18条で謳われている負傷などによる欠勤時の月額補償金割合の変更(引き上げ)が挙げられます。

これまでは月額賃金の60%とされていた割合が同70%に引き上げられました。

(月額賃金の上限は20,000バーツとされていますので、その70%である14,000バーツが最大補償額ということになります)

補償期間もこれまでは「3日以上継続して労働が出来ない場合」とされていましたが、改定により「初日から」となりました。

そして労働者が障がいを負った場合の補償期間が、これまでの「15年を超える必要は無い」から「15年以上であること」と改められています。

尚、労働者が負傷した場合に適切な治療を受けられるよう手配しなかった場合葬儀費用を支払わなかった拠出金を納付しなかったなどの場合には使用者は罰則の対象となりますので注意が必要です。

 

第62条

労働者が負傷したり疾病に罹った場合、治療を受けられるように手配しなかった、または葬儀費用を支払わない、拠出金の納付をしない場合には6ヶ月以下の懲役もしくは2万バーツ以下の罰金、または併科とする

この罰金の金額も改訂によって1万バーツから2万バーツへと引き上げられています。

労災の必要な事態は勿論発生しないことが望ましいですが、もし発生した場合に速やかに適切な対処が出来るよう、その存在や内容を普段から少し気にかけておくと良いかもしれません。