未だ収束の兆しが見えない世界規模のコロナ問題ですが、タイも3月からコロナと戦っております。
2020年7月31日現在、タイは66日間連続で市中感染ゼロ、累計の感染者数は3,304名で、内114名がまだ入院中、回復の割合は94.2%、死亡率1.76%という状況です。世界的に未だ感染者数が増え続ける中で、ある程度の抑え込みに成功していると言えるのではないでしょうか。非常事態宣言はこれまでに4回延長され、8月末までとなります。街中は基本的にマスクの着用が必須で、ソーシャルディスタンスも一応心掛けています。対外的には、非常事態宣言下において入国制限が続き、タイ航空は現在運行を停止しています(日本航空や全日空は運行しています)。
日本人の場合、ワークパーミットの保持者や政府機関から許可を得た人が、日本のタイ大使館に申請し入国許可を得、その上で、コロナの陰性証明書(診断書)、アメリカドルで10万ドル以上をカバーする保険、Fit to Fly(健康証明書)等要件を満たした場合に、大使館が割当てた航空機によってタイに入国することができます。入国後も、14日間タイ国内(タイ政府指定の施設)において検疫隔離となります。現状ではそれを避けるため、タイに戻らない人も多いようです。今回は7月31日、次回は8月7日に特別便が運航されます。現在タイは、ある意味、半軍事政権であり、強制力を持ったやり方で対策を進めてきたため、コロナの抑え込みについては一定の成果が見られます。
しかしながらタイの経済状況は芳しくありません。例えば自動車業界ですが、生産台数、売上台数、共に低迷しています。先日、コロナ禍における世界初のモーターショーが2週間バンコクで開催されましたが、売上台数は昨年比54%減、来場者数も34%減。コロナの感染防止を徹底して開催した為に、来場者数の減少については想定の範囲内であったようです。日本のメーカーに関しては、トヨタの販売台数は39%減、マツダは54%減、ホンダは59%減でした。一方、タイ人はハイブリットや電気自動車に興味があるため、こちらに限っては1~6月で6.3%増の売上台数となりました。
輸出入について、タイから他国への輸出は(自動車部品、電気、電子その部品)今年は7.5%減。輸入については12.9%減(原材料や半製品など)となっています。輸入が持ち直した部分としてはパソコンやタブレット、食品、家具などが挙げられます。
今後のタイ経済の見通しですが、コロナのワクチンが開発されても、完全復活まで2年はかかると見られています。今年のGDP成長率予測は8.1%マイナス。来年GDPは3-5%のプラスではないかと言われています。
ポイントとしては自動車産業や観光産業がどこまで回復するかではないでしょうか。株価も、昨年末と比べ4分の3程度に下落と、今のところ景気指標は良くありませんが、第3四半期以降ゆるやかに回復していくであろうというのが、現在の状況予測です。
コロナ後に期待される産業として、今までタイはタイランド4.0により10の高度産業の育成(次世代自動車、スマートエレクトロニクス、医療健康ツーリズム、農業・バイオテクノロジー、未来食品、ロボット産業、航空・ロジスティック、バイオ燃料バイオ化学、デジタル産業、医療ハブとなる産業)を掲げてきましたが、これらについては今後も継続されるでしょう。
アフターコロナ/ポストコロナを担う産業としては、具体的な内容はまだ出ていませんが、方向性として、タイ政府が掲げているのは、①農業(スマート農業)②食品③バイオエネルギ-(再生可能エネルギー)④医療関係です。
バイオと循環型経済、グリーンという「BCG」と呼ばれる経済のマスタープランにも力を入れていくと見られています。
懸念事項として、これらのプランやタイランド4.0に携わってきた元学者の経済閣僚4名が辞任したことが挙げられるでしょう。この出来事はタイでの根深い問題を表しています。軍人は経済・財務関連に弱いため、経済閣僚は元学者である人物が多いのですが、政局や党内力学等により、それらの閣僚が疎まれる傾向にあります。今回の出来事によって今後BCGやタイランド4.0がどのように展開していくのかが不透明になってしまっています。
現在タイでは、“半”軍事政権に対する反政府集会が活発です。ただ、政局と経済政策は過去のタイの経緯を鑑みても、たとえば政権が代わった場合においても、それが直接すぐに経済政策に影響を与えるということはないと見られています。
日本からタイへの進出については今は様子見の状況となっていますが、それでもBOIを申請する企業はゼロではありません。手順として、まずは東京や大阪のBOI事務所へ申請し、その後タイの本部に書類が送られ、BOI担当官とのインタビューはオンラインでの実施となっています。タイ当局は、タイへの進出関連の申請は現状でも受け付けています。
BOIは食品関係や、デジタル関係(クラウド/情報ストレージ関連、オンライン会議の為のシステム、感染拡大によって人が行動をすることによる感染リスクを防止する為のIOTシステム、ロボット・自動化システム、来年より施行される個人情報保護法に関連するセキュリティーシステム、Eコマース、情報エンターテイメントシステム、決済関連、商品配達追跡システム)の企業の申請も積極的に受け付けています。
コロナ禍における失業率ですが、これまでタイは1%以下を維持してきました。今年の第1四半期は1%(約40万人)であり、第2四半期は8月に発表されます。カシコンリサーチの試算では9%、約800万人失業の数値が出ていますが、一方、国家経済社会開発委員会による試算では3~4%、約200万人とされており、こちらの統計・数値が妥当であると見られています。
タイへの入国について、国民の声は“まだ外国人を入れるな”です。政権としても市中感染ゼロを継続維持してきて、ここで外国人を入国させて感染者が増えることを懸念し、入国規制を強制的に実施することを主な目的としての非常事態宣言の延長であると見ています。その他の生活は従来の状態に戻りつつあります。また、観光産業の浮揚の為の政策として、「We travel together」キャンペーンが実施されています。これは旅行時の宿泊費の40%を政府が補助する政策で、タイ人による国内旅行の推進をしていきます。
コロナに負けるな!コロナに打ち勝て!“タイ・チャナ(タイは勝利する)”。まさしくタイは今、正念場です。