世界的に様々な分野や人へ、大小合わせた様々な影響をもたらし続けているコロナウイルス。経済活動への影響もさまざま。チャンスと捉え、新しいことへ、新しい場所で勝負をするべく動き出す方もいれば、出来るだけその身を小さく影響を受ける面積を少なくして、なんとか耐えようとする方もいます。

そんな状況ですので、タイから撤退を考えられている方もこれからどんどん増えていくのではないかと思われます。残念なことに、撤退を視野に入れたご相談が増えています。

 

一言に撤退と言っても、簡単にことは運びません。撤退をするのにも体力と時間とお金がかかってしまいます。

簡単な流れはこのようになります。

 

株主総会開催(新聞にて告知&株主へ通知)

   解散(清算開始)を決めます。清算人も決めてしまいます。

資産と負債を片づける

   売れるものはジャンジャン売ります。返さなければならないもの、負債も片づけます。

   精算登記日までに完了させましょう。実際には株主総会よりも大分前からこの作業は始まります。

 本社からの借り入れ・親子ローンは返せるのなら返すのですが返済を免除してもらうことも可能です。本社側に「借入金免除通知書」を発行して貰いましょう。その際、免除された借入金は会社の収入となります。借りてたものを、「返さなくていいよ。あげるよ」ということになるのでIncomeとなります。これ、金額が大きい場合はちょっと注意です。それだけ課税対象が増えるということです。5年間繰り越せる繰越欠損金などで相殺できるかどうかなど、注意が必要です。

会計資料保管場所を探す

   タイでは、過去5年間の会計資料タイ国内にて保管しなければなりません。(税務署との間で解決していない案件がある場合は、10年間保管)清算登記日から遡って5年間の会計資料保管場所を探さなければなりません。大体は大手倉庫会社などになります。5年(または7年や10年)の保管期間終了後、倉庫会社にて資料破棄をするプランなどもあります。保管期間中、税務調査などで過去の資料が必要になることもあるかもしれません。現地会計会社などに対応を委託している場合は、保管中の会計資料へのアクセス可能者リストへ会計会社も追加しておくと便利かと思います。

従業員の解雇

   1か月以上前に従業員に会社を閉鎖する旨伝え、解雇することを通知します。その際、会社都合の解雇となりますので解雇補償金等を支払う必要があります。解雇通知書などは弁護士にお願いして作成してもらう方法が一般的です。

清算登記(株主総会から14日以内)

   この日が会計年度最終日となります。会計を〆ます。そして最後の会計監査となります。

   この日以降は、清算が完了するまでお金の移動が基本的には出来ませんので、受け取るものは受け取り、払うものは払っておきます。また、3か月ごとに商務省へ進み具合の報告をしなければなりません。

VAT付加価値税の申告をVAT登録抹消まで繰り返す

   清算登記後は会社がなくなるわけですから、会社名での支払いは出来なくなります。毎月申告・納付していた源泉税も発生しませんから申告の必要がないのですが、VATは申告し続けます。当然取引がないのですから申告はゼロなのですが、VAT登録が抹消されるまで、ずーーーーーーーと毎月毎月申告し続けなくてはなりません

法人税確定申告提出清算登記から150日以内

   最後の法人税確定申告を終えると、税務調査が開始されます。気長に待ちましょう。数か月から数年(2年から3年)かかります。その間、追加の資料提出などを求められる場合もあります。対応しつつ気長に待ちましょう。この間も、VATの申告は毎月です。

VAT登録抹消

   気長に待っていると、ある日歳入局からVAT登録抹消の通知が届きます。

   この通知が届いたということは、税務調査が終わったと言うことになります。

・銀行に残った預金等を株主へ返金

・法人抹消(清算完了の登記)

 

大まかにはこのような感じになります。実際に作業をしてみると、こまごましたことがどんどん出てきます。オフィスのデポジット返金交渉や原状復帰工事、様々な契約解除や調整、従業員の社会保険登録の抹消、それに加えて駐在員の場合はご自身の引っ越しやビザ・ワークパーミットキャンセルの為の必要資料、帰国のための準備など。

あらかじめスケジュールに余裕を持って、一つ一つ確認しながら行う必要があります。スケジュールを立てるだけで疲れてしまいます。

 

目まぐるしくさまざまなことが変化を繰り返し、元のように戻り始めたり、全く違うものが生まれたり、無くなって行ったり、止まってしまったり、、、こんな中で”この先”を見通して、予想して、進む先を見極めるのは大変な事だと思います。それでも決めなければならない時もあります。

そんなときは、まずはご相談ください。

共に乗り越えましょう。