なぜ今この時期に半導体の価格が高騰するのか、複雑に絡み合った要因によって引き起こされているようなので簡単に要約してみました。
1. 需要量が供給量を上回ることによる価格の上昇
巣ごもり需要により電子機器類の消費量が急激に増加しました。一例としてソニーの家庭用ゲーム機”PS5″が挙げられます。これが牽引役となりソニーは過去最高の純利益を計上しています。
2. 米中貿易摩擦により人為的に製造コストが引き上げられた可能性
米国はファーウェイ、ZTE、その他中国IT企業に対して輸出規制を設けましたが、これに対応するための買い占めが値上がり要因の一つと言われております。
3. 半導体製造プロセスや電子機器製造に必要とされる資材の供給不足
需要が増加するに伴い半導体製品を生産する過程で必要となる資材が同時に不足していることもその要因の一つです。
例を挙げますと、味の素ファインテクノが供給する層間絶縁材(平面に構成された半導体回路を積層し小型化するために必要な材料)が不足していると言われております。
4. 半導体製造能力不足
半導体製造大手台湾のTSMC社は世界のメーカーより半導体の製造を請け負っておりますが、需要に追い付けない状態となっております。半導体製造施設の増設には、3年から5年の年月が必要と言われており、しばらくの間、供給が追いつかない状態が続くと懸念されています。
5. 輸送能力不足
海上貨物の7%が中国の港から出航しておらず、世界的なコンテナ不足による輸送割増料金が加算されるようになりました。これを受け航空貨物の需要が高まりましたが、新型コロナウイルスのワクチン輸送により貨物容量が減少しているそうです。
6. 半導体製造のリードタイム
半導体の製造には非常に長い期間(半年から1年)が必要となります。急な需要の高まりに機敏に反応することは特にこのパンデミック下においては困難といえます。最近よく耳にする半導体不足よる自動車製造減もこの影響を受けているようです。(正確には自動車販売が急落し自動車関連半導体を減産している間に、他業種の半導体需要に製造シェアを奪われたというのが実情のようです。)
以上、世界的な半導体価格高騰の要因についてまとめさせて頂きました。皆様のご理解の一助になれば幸いです。