どこの国にも、どこの組織にも、理由はそれぞれかと思いますが『悪い事』をする人が現れる可能性はあります。
その人が悪いのか、管理する側が悪いのか、はたまた世の中生きづらいのが悪いのか、、、
最近のニュースや、人づてに聞く話、お客さまから頂くご相談、ご質問の内容に「横領」という共通キーワードが重なったこともあり、会計の面から、今すぐに出来る防衛策・ご注意いただきたいポイントをご紹介できればと思います。
備えあれば憂いなし、それでも起こる時は起こってしまいますが、「あれをやっておけば防げたに」とか、「あれをやっておかなかったがために、、、」とならないようにしておくのも大切ですね。
その前に、私が目の当たりにした事例を1つ
その当時働いていた会社は、材料を仕入れ、仕入れ票を保管、1か月(または一定期間)の仕入れをまとめた請求書が後日届くので、それをチェックして経理へ提出。経理スタッフが支払いをするというスタイルでした。
経理スタッフは、書類を精査した後、銀行振り込みにて支払いをするため社長に報告&承認を貰う。
ある日、仕入れが必要になったので発注を掛けましたが待てど暮らせど品物が届かない、、、、何度か催促するも届かない、、、
何度目かの催促の際に告げられたのは、「先月の支払いを完了しないと新たな配達はしない」というものでした。ん?先月分の請求書はとっくに経理に送ったのに、まだ支払っていない?
急いで経理に確認すると、「あっ!振り込むの忘れちゃってた!仕入れ先に急いで連絡するから!」
まぁそんな事もあるよねー。忘れちゃったのか。仕方ない。次ちゃんとしてねー。なんてやり取りをしてました。
どう処理したかは知りませんが、その電話の後、すぐに配達された品物。良かった良かった。
でも、これで終わらなかったのです。
1回なら、「もーおっちょこちょいだなぁ」で終わってたんでしょうが、しばらくするとまた同じことが、違う仕入れ先からも告げられます。その都度、経理は忘れた、だの、社長がオフィスに来ない(本当は来てた)から振り込みが遅れてる、だとか、、、、
経理が仕入れ先に、なにをどう弁解していたのか、どうやって配達再開をお願いしていたのか、社長がお金をどう管理していたのか当時の私は知りませんでした。現場の人間としては仕入れが止まらなければ仕事は回りますから。また、「横領」なんて考えたこともない人間の思考では、このおかしな状況の中にいても、会社のお金を盗む人がいるということに考えが行きません。それが更に、この経理スタッフに犯行を重ねるチャンスを与えることになっていました。
結果、数十回に渡り横領を重ね総額20数万バーツを横領した経理スタッフは会社から消えました。消えて初めて横領されていたことを知った社長。慌てて連絡してみましたが、横領したお金を持って海外へ出稼ぎに飛び立った後でした。
この時の社長、経理から提出される請求書と支払い票をチェックし承認、銀行振り込みスリップへのサインをして完了。領収書のチェックはせずに、銀行通帳で支出と残高をチェックしていただけ。まぁ、仕入れ先のほとんどが発行する領収書(ローカルの飲食店を経営する会社だったため、仕入れ先はTax Invoiceの発行のない所の方が多かったです)も、殆ど偽造されていたようですのでチェックしたところで意味は無かったかもしれませんが。
防ぐポイントは沢山あったと思います。
まず大前提として
『インボイス(請求書)+支払い記録+領収書(Tax Invoice)は常にセットと肝に銘じる』
インボイスの無いものに支払いは発生しませんし、どこへ支払ったかもはっきりさせないといけません。そして、支払った証拠、証憑である領収書は最重要アイテムです。
領収書がタイ語だと読めないという問題もありますが、これは頑張っていただくしかない(笑)
もしくは、『読めなくても領収書の内容について毎度スタッフに確認』すると、適度なプレッシャーになり、常に確認されているという意識を植え付けることは出来るかもしれません。偽造を見破るのは難しいかもしれませんが、1枚1枚チェックする姿勢を見せることで、そもそも偽造を試そうとしなくなる可能性は高いと思います。日本語か英語の訳を付けてくれるようお願いしてもいいかもしれませんね。
少額の支出に備え、小口現金を活用されている方も多いと思いますが、毎月スタッフが持ってくる支出の記録に承認のサインをするだけになっていませんか?少額だからと言っても、お金はお金です。領収書をきちんとチェックすることはもちろんですが、たまには『抜き打ちで小口現金の残金チェック』をしてみるのもいいかもしれません。
他には
『財務諸表に興味を持つ』
会社のお金の出入りや、何にどれだけのお金を使ったかが分かる財務諸表。毎月見続けていくと、意図しない大きなお金の動きや覚えのない費用への支払いなどを発見することが出来るかもしれません。また、常にお金の動きをチェックしている姿勢を示すことも効果があると思います。
『銀行残高を常にチェック』
上に出てきた私の前職の社長のように、残高だけを気にしていても何も防げませんが、出て行ったお金、入って来たお金をインボイスと領収書(Tax Invoice)で定期的にチェックするようにしてください。これも横領を未然に防ぐ有効な方法だと思います。
『Tax Invoiceの発行されない購入は避ける』
ご自分で支払う際ももちろんですが、従業員に買い物を頼んだり、仕入れ先から発行されるものも含めて、会社名、住所、Tax IDが記載される正規のTax Invoiceが入手できる仕入れ先を選ぶことも横領を防ぐ方法の一つとなるかと思います。セブンイレブンでのお買い物もお願いすればちゃんとTax Invoiceを発行してくれますよ。
『小切手の使い方(二重線はマスト!)』をマスター
一般の日本人には余り扱う機会のない小切手ですが、現金を持ち歩くリスクを減らしてくれる点ではとても便利なものかと思います。が、正しい使い方を知らなければ、意図しない相手に現金を手渡してしまうのと同じ役割をしてしまう場合があります。スタッフの言われるままにサインしていませんか?
①受取人欄には支払先の社名、団体名等を明記する事
受取人欄に記載のないもの、またはCashと記載されていると誰でも受け取り可能となってしまいます。
②書き損じ、取り消し線で修正した箇所は無いか確認
修正したものはタイでは使用することが出来なくなりましたのでお気を付けください
③必ず線引きをする
小切手の表側の右肩などに、2本の横線を引いたもの。 小切手の不正換金などを防ぐために用いられる。 線引小切手は、受け取る相手側の人間を特定できるため、小切手の紛失や盗難に際しても不正が発覚しやすい。ーコトバンクより引用
線引きをすることにより、現金化するためには受取人名義の銀行口座に一度入金しなければ換金できなくなります(二重線の間にAccount Payee Only等書かれたスタンプが便利ですね)。
④Or Bearerという文字(大体右上に書いてあります)の上に線を引き消しておく。
タイ語ではอรือผู้ถือと記載がありますがタイ語も消してください。消しておかないと、持参人に対しても支払い可能となってしまいます。
③の線引きがなく、④のOrBearerも消していなかったら、、、、誰でも現金か可能となってしまいます。
そして、⑤コピー/スキャンをして記録として保存しておくと後日確認が容易になります。
でも一番は、スタッフ任せにばかりせず、少しでも疑問に思うお金の動きがあれば都度スタッフに確認を取り、隙を与えないことかと思います。もちろんスタッフとの信頼関係も大切です。
あ、あと
ボーナスを支給していないのに、新しい服を着てきた、バックが新しくなっている、金のネックレスをつけてきた等、普段と様子が違う時は要注意なんて笑いながら教えて下さった某会社の社長様。それも重要なポイントかもしれませんね!
以上簡単ではございますが、お気を付けいただければと思います。
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。