「コストパフォーマンス」という言葉をご存知でしょうか?
コストパフォーマンスはビジネスの専門用語であり英語が母国語の方達でもきちんと意味を理解している人は少ないかと思います。
(日本語化した「コスパ」は本来の意味とは違ったものになっています)簡単に言えばコストパフォーマンスとは「コストを上手くコントロールすること」だと私は思います。
例を挙げるならBudgeted cost VS Actual costですね。実際の費用が予算と同じかそれ以下ならコストパフォーマンス達成、そうでなければ達成されなかったということになります。
コストパフォーマンスはマネージメントアカウンティングにとってとても重要な情報となります。故にマネージメントアカウンタントは見込み費用と実際の費用の誤差を計算し、その原因を的確に理解する必要があります。
誤差にはいくつかの種類がありますが、今回は価格の誤差(Price Variance)と効率の誤差(Efficiency variance)を例に挙げます。
計算をするにあたり以下の公式を使うととても簡単です。
説明すると長くなるので実際に練習問題を解いてみましょう。
(練習問題)
M&A manufacture は高品質の置物(木彫り彫刻)の生産と販売をしている会社です。
M&Aの社長は利益を上げるために生産コストを抑えることに重点をおくことにしました。
以下が今月の見込み生産量と、それに対する見込み費用(原材料に関するものに限る)です。
- 生産量(見込み)=20,000個
- 原材料価格(見込み)=500BT(1キロあたり)
- 置物1つを生産するのに必要な原材料(見込み)=1キロ
見込み原材料費用=20,000 x1x 500=10,000,000BT
しかしその月の実際の原材料費用は11,520,000BTでした。社長は怒り、購買部と生産部のマネージャーに減給の処分をくだすことにしました。
一体何が原因で費用が1,520,000バーツも上がってしまったのでしょうか?
調査の結果、以下のことがわかりました。
- 20,000個の置物がその月に生産されていた。(見込みどおり)
- 購買部の交渉により1キロの原材料を480バーツで購入していた。
- 置物を1つ生産するのに2キロの原材料が必要だった。
では早速Actual resultsと Flex とFlexible budgetを使って原因を調べてみましょう。
Price Variance = AQ x AP – AQ x BP
=20,000 x 1.2 x 480 – 20,000 x 1.2 x 500
=-480,000 (Favorable)
Efficiency variance = AQ x BP – BQ allowed for AQ x BP
= 20,000 x 1.2 x 500 – 20,000 x 1 x 500
=2,000,000 (Unfavorable)
2,000,000-480,000=1,520,000 (Unfavorable)
以上のことから購買部は480,000BTの費用を抑えることに成功し、逆に生産部の費用は2,000,000BT見込み費用よりもオーバーしていたことがわかりました。
事実を知った社長は購買部のマネージャーの減給を取り消し、賞与を与えました。生産部のマネージャーは減給どころかクビになりました。
しかしそれが正しい判断であったかは疑問です。
なぜなら生産部のアンダーパフォーマンスの原因がもしかしたら安値で購入した原材料の低品質のせいかもしれないからです。もしそうであれば生産部には非がないといえます。
もっと言えばそもそもBudgeting自体が正確ではなく、1キロの原材料で1つの置物を生産することが非現実的だったかもしれません。(もし原因が生産部の従業員のスキル不足により通常の1.2倍もの原材料が必要になったのであればこの判断は妥当かもしれません)
マネージメントアカウンタントの役割はこのような情報を集め、理解し、的確なアドバイスを会社内部の人間に与えることです。もしもM&A manufactureの(架空の会社ですよ)マネージメントアカウンタントがしっかりと仕事をしていたら生産部のマネージャーはクビを免れたかもしれません。
アカウンティングの仕事はただ数字を扱う仕事ではなく、情報を正しく理解しその情報を周りの人(financial accounting やtax accountingは外部の人間も含む)にわかりやすく説明し、ビジネスにおいてのベストな判断を下せるよう手助けをすることだと私は思います。
そのためには会計の知識やスキルはもちろんビジネス全般の法律の知識、コミュニケーションスキル(近年会計の知識やスキルよりも重要視されているそうです)、そして倫理観も必要となります。
会計を学ぶことはとても大変ですが、ビジネスをより深く理解するために不可欠なものとなります。このブログを通じて少しでも会計学に興味を持っていただければ幸いです。