今回はタイで増資をする場合の手順についてご説明いたします。

1.株主総会を開催して増資についての特別決議を行なう

2.株主が増資額を会社の銀行口座に入金する

3.銀行から残高証明書を発行してもらう

4.商務省で増資の手続き(登記)

 

1.株主総会での特別決議

増資はタイの民商法典(Thai Civil and Commercial Code)において「株式会社は、株主総会の特別決議に基づき新株を発行することで、増資することができる」と定められており、増資の為には株主総会を開催して特別決議を行なう必要があります

通常の株主総会ですと開催日の7日以上前までに新聞への広告の掲載及び全株主へ通知とされていますが、特別決議を要する株主総会の場合には14日以上前の通知が求められますので注意が必要です(民商法典第1175条)。

原則として、タイでは「株主割当増資」となり、既存株主に対してその保有する株式数の割合に応じて新株の引受権を与えなければならないとされております。

また、合弁会社の場合、増資に際しましては、会社の付属定款に要件が謳われている場合がありますので、事前の確認が必要となります(民商法典第1222条1項)。

実務上は、以下の方法がございます。

(1)増資手続きを行う前に、既存株主の株を第三者に1株以上譲渡する(当該第三者を会社の新株主とする)

(2)増資手続きの中で、当該第三者以外の既存株主が、新株の引き受けを行わない(新株の引き受けを拒否する)

この方法を用いることにより、特定の第三者が新株を引き受けることが可能となります。また、この場合、既存株主がこの手続きに同意していることが前提となります。

 

2.銀行口座への入金

株主総会での決議を経たら、次は株主が会社の銀行口座へ増資額の入金をします。

この入金額については増資額の全額である必要はありませんが、「少なくとも増資額の25%」である必要があります。

もし1千万バーツの増資をするのであれば、少なくとも250万バーツの払い込みが必要ということになります(この払い込みの割合については株主リスト上に表示されます)。

 

3.銀行からの残高証明書の発行

商務省での増資についての登記の際には銀行の残高証明書(タイ語)の提出が求められます。

この残高証明書は上記2の払い込み増資額以上の金額が口座にあることを証明するもので、増資を決議した株主総会よりも後の日付で発行されたものでなければなりません。

例えば上記例のように今回は1千万バーツの増資額の内250万バーツのみを払い込むという場合には残高証明書には250万バーツ以上の額が必要ということになります。

 

4.商務省での登記

前述の民商法典では「増資または減資の特別決議は、その決議から14日以内に登記申請しなければならない」と定められていますので、株主総会の後、口座への払い込みから商務省での登記まで全ての作業を14日以内に完了する必要があります。

また、商務省で登記する増資額は払い込み額に関わらず株主総会で決議された増資全額(上記例であれば1千万バーツ)となります。

以上が大まかな増資の流れになります。

 

なお、増資の際の初回の払い込み資本は増資額の少なくとも25%と定められていますが、この払い込み額について(25%にするのか他のパーセンテージにするのか等)は株主総会で決めることができます

ただ、もし初回の払込額を100%未満とした場合、残りの額をいつどのタイミングで何%払い込むかという点については株主総会では無く取締役会で決めることになります。

例えば株主総会で1千万バーツの増資を決議し、初回の払い込みを25%(250万バーツ)とした場合、その後取締役会は残りの75%について「2回目の払い込みは20%とする」などと決めることが出来、決定後、払込期限の21日前までに株主に通知することになります。

また資本金は「いつまでに100%払い込む」といった規定はありませんので、1千万バーツの増資を登記して実際の払込資本はその内の25%のみという状態を維持していても特段の問題はありません。

しかしながら特定額の資本金額が規定されている事業を行う場合やライセンスの取得をする場合には当該規定額以上の資本金が払い込まれている必要がありますので注意が必要です。