最近、財務諸表に記載されない「人的資本」への注目が高まってきています。

「人的資本」とは個人が持つ知識、技能、能力、資質等を付加価値を生み出す資本としてみる考え方です。

そして、人的資本を重視する経営スタイルは「人的資本経営」*と呼ばれています。

この「人的資本経営」が求められている背景には環境の変化のスピードが高まり、グローバル化が進むビジネス環境では複雑性と不確実性が高まっている為に、将来が見通し難い環境下で事業(企業)の継続性を求めていく為には、有形資本とは異なり、継続して価値を生み出していく事が可能な「人的資本」への投資が企業の持続的な価値を高めていく為に必要という認識(危機感)が高まってきている為と思われます。

 一方にて、従来の企業における社員育成方法(集合教育・OJT)は社員を集団(組織)の一員として会社の環境への適応・順応を目的とするものが主流でした。(組織に忠実で組織や上司の指示や暗黙の意向に従っていれば充分な段階=「環境順応」が目的)

 しかし、環境変化のスピードが速まり、グローバル化が進む昨今のビジネス環境ではそれだけでは成果を上げていく事が難しくなってきており、最近では社員にも「自分なりの価値体系や意思決定基準もって主体的に行動できる。」「自分の意見や主張を明確に語ることができる。」「自分の成長に強い関心がある。」等の自立/自律(自己主導)が求められてきています。

 さらに、かつては強い姿勢で自分が正しいと考える持論を主張して結果を出していれば勤まったかもしれない組織のリーダーには、これからは単に組織を運営するだけではなく、必要に応じて組織とその規範、使命、文化を組み換えられるリーダーとしての能力が求められてくる事でしょう。

 つまり、「人的資本」から継続的な価値を生み出して行く為には従来の教育とは異なる個々の社員の「自発的な成長」や「行動変容」を導き出す為の環境(教育)が必要になってきており、この点につきましては「人的資本経営」の視点からは「会社と社員」「社員と社員」間の対話の重要性(対話と会話は異なる)がフォーカスされています。

 社員ひとりひとりのチャレンジ姿勢・発想力の向上の為の「対話」は皆様の会社では行われていますでしょうか?

* 当コラムは「内閣府ガイド人的資本経営」「経済産業省:人材版伊藤レポート2.0」が対象と

する「人的資本経営」の一部をフォーカスして作成しました。