タイにおいても、時に横領事件が発生いたします。
今回、ある日系企業では、約500万バーツもの会社のお金が横領され、
パートナーであったタイ人容疑者は約2年間逃亡した末、ついに警察に逮捕されました。
警察よりの再三の出頭要請も無視し続けた結果、逮捕状が発行され、
タイ全国や隣国各地を転々と逃亡し続けました。
しかしながら、お金を横領された日系企業の社長は、タイの3つの“あ”の精神で、
決して、あわてず、あせらず、あきらめず で、最後は執念でした。
タイではよくある話なのかもしれませんが、設立当初より長きに渡り信頼のおけるパートナーであっただけに、
その社長の無念さ、ショックは計り知れないものがありました。
横領されたお金はおそらく戻ってこないでしょう(お金は豪邸に成り変り、その後、第三者に売却されました)。
それでも、罪を犯したら罰を受けなければならぬ、の思いで、
今回、横領された金額の約30%もの大金をかけて逮捕に至りました。
タイでは、このような事件の場合、よほどの金額でない限り、被害届が出されても、
そこに犯罪があると認識していても、残念ながら警察が捜査をしてくれないケースが多いのが実状です。
そのため、コストをかけて自分で私立探偵(警察、軍隊のある一部組織がアルバイトで実行)を雇い捜索をし、
また一方において、弁護士を雇い、警察が逮捕状を発行できる証拠能力のある証拠固めを行います。
容疑者を発見したら、警察に通報し、確保・逮捕までのアレンジと調整をします。
つまり、警察を現場に連れていき、「あそこに容疑者がいるから捕まえてくれ!」と言い、
目の前で逮捕してもらいます。
今回は、容疑者が長期間に渡り隣国へ逃亡しましたので、隣国の警察の協力を得て、
その国内で身柄を拘束し、国境まで連行してもらう計画を立てていましたが、
一時、バンコクへ戻ってきた一瞬の隙を見計らい、容疑者を特定した上での逮捕に至りました。
時に運の良さも必要です。
刑事事件となりますので、その後は、日本と同様、タイ警察や検察、裁判所の出番となります。
しかし、この程度の金額であれば、多忙な裁判所はなかなか取り上げようとはせず、和解を勧めてきます。
また、人によっては、例えば投獄となると、この間、復讐のみを考えて出獄してくるゆえ、
止めたほうが良いとのアドバイスを受けるケースも多くあります。
結局は、逮捕しても、恩を着せるのみで釈放してしまうケースが多いのです。
大金をかけ、自己満足のみになるのです。
マネジメントを完全にタイ人に任すこと、タイに進出する外国企業にとっては理想
の形の一つかもしれませんが、やはりそこには、長きに渡り構築された揺るぎない信頼関係と、
一方において管理体制含めた大いなるリスクマネジメントが必要不可欠ということを
再認識させられた事件でした。
本文はArayz2018年6月号に掲載されたものです。
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