久々にタイの総選挙が行われた。

特筆すべきは、下馬評では全く話題に成らなかった若者を中心とする、無名の、ピター氏に率いられる前進党が、SNSを駆使して、あれよ、あれよという間に、最大の議席数を獲得し、第一党に躍り出た事である。

世界でこの様な例は聞いたことが無い事象で、歴史的な出来事であったと感じている。

但し、その公約の中に、タイの過去を根底より覆す様な内容のものがあり、それが若者の中では評価され、若者のの投票率が85%と言われる様な事象と成った事は理解出来るが、この公約を実行に移す事には大きな懸念材料である事が憂慮された。

この国を二分する様な事態は何としても回避せねば成らぬと考えた、有識者の意向には筆者も賛成であった。

当然、次期首相はピター氏で、連立を模索し、新政権が発足するのが通常ではあるが、それでは国が割れる可能性がある事が危惧された。

世の中には知恵者がいる様で、ピター氏が父よりメディア企業の株を譲渡されていた事を突き止め、これが、憲法違反として、憲法裁判所より、彼の国会議員としての権利を一時停止する命令が出された。

世論調査によると、9割近い国民は、一度ピター氏に首相をやらしてみたいとの結果に成っているが、余りにも過激な公約が癌と成り、選挙が終わっても、首相が決まらぬ異例の事態が一か月以上も続いている。

そこで二番目に票を獲得した、元のタクシン氏が創設した貢献党と連立を組み、貢献党より首相を出す案が浮上してきたが、これには、目下帰国を切望しているタクシン氏の帰国問題が重なり、これまた国を二分する危険を孕んでいるため、容易には決定出来ぬ不安定状態と成っている。

投票した多くの若者を説得し、公約の一部変更が出来なかったものか残念に感じているし、思慮深いタイ人がどの様な落とし所で本件を決着に導くのか、今後を大いに注目していくが、日本では全くこの様な動きが感じられなく、寧ろ若者が旧態然たる、自民党に投票している事を憂慮している。