前号で「人的資本経営」の視点からは「会社と社員」「社員と社員」の間での対話の重要性(対話と会話は異なる)がフォーカスされています と書きました。
さて、普段使っている「会話」と「対話」という言葉の意味の違いは何でしょうか?
一般的に「会話」とは2人または少人数で話し合う事を意味し「日常的なコミュニケーションにおける取り留めのない話」というような意味合いがありますので、通常「会話」には明確なゴールや目的は無いように思えます。
それに対して「対話」とは「2人で向かい合って話す事」、「相対して話す事」。
英語ではダイアローグと言い「相互理解の為のコミュニケーション」という意味合いを持っていますので、「対話」には何かしらのテーマ(目的やゴール)があるのではないでしょうか?
双方の大きな違いは、「会話」が、あたりさわりのない話題であっても楽しい時間を共有したり、また、そこから相手との関係性を作りだしたりしていく事に目的を置いているのに対して、「対話」とは単なる関係性づくりではなく、お互いの信頼関係を築いていく為に共通するテーマ(目的やゴール)に向き合い「しっかりと話し合っていく」という事であると言えます。
それでは「しっかりと話し合っていく」とはどのような事なのでしょうか?
「対話」の目的のひとつとして共通のテーマ(目的やゴール)や状況に対してのお互いの解釈(意味)の違いを擦り合わせていく事があります。人はそれぞれ価値観や習慣、生まれ育った環境(文化)、また双方の置かれている立場も異なりますので、共通のテーマ(目的やゴール)に対しての解釈(意味)も異なってくる事が多くなりがちです。ですからお互いに言葉を交わしていても、その言葉の解釈(意味)の共有が出来ていない為に、お互いの認識がずれてしまいコミュニケーションや如いては双方の関係性に問題が生じてしまう事があります。
「対話」はこの解釈(意味)の違いを双方で擦り合わせ、共有していく為の大切な手段であるという事が言えるのではないでしょうか。
例えば「会話」でも相手との関係性は維持できるかもしれませんが、解釈(意味)の違いから発生している問題の解決にはつながりませんし、また更には共通するテーマ(目的やゴール)達成の為のベクトルを合わせも覚束なくなってきてしまいます。
「対話」を繰り返しお互いの解釈(意味)の捉え方の違い(ズレ)を本音で話し合っていく機会を設けて行く事で、更には共通のテーマ(目的やゴール)に対しても共に向かい合っていく事も可能になってきます。
皆様の社内では本社と現地、上司と部下、あるいは日本人社員とタイ人社員の間でのコミュニケーションは「会話」それとも「対話」で行われていますでしょうか?
以上